Oto

ミストのOtoのレビュー・感想・評価

ミスト(2007年製作の映画)
4.1
伝え方こそ極端だけど、伝えようとしている事はかなり真っ当で、これだけの深みがあるホラーって稀有で面白かった。『Cube』と同じく「社会の縮図」系の映画だと思う。

キリスト原理主義者はアメリカの人口の25%いるらしいので、この映画が描く悪は空想じゃないなと。
言語化するの難しいけど、「自分以外の意見を一切認めない人」の恐ろしさなのかな。英雄も独裁者も同じ人間だし、宗教や政治がある以上、対岸の火事じゃない。。
結局は拳銃という暴力で押さえつけただけなのでそこのモヤモヤは残る。その制裁としての終盤とも考えられるけど。

パニック映画ってゾンビにしても怪獣にしても、結局追い込まれた人間の心情が一番みたいので、かなり満足。ホラー好きでもないので、モンスターデザインとか実はあんまり気にしていない。
『クワイエット・プレイス』に足りなかったのはそこかもしれない、家族という繋がった人だけの物語だったので。

原作にはないラストは、5発あれば『ソナチネ』のようにどこか清々しいバッドエンドだったし、0発ならよくあるいい話だったわけだけども、あの絶妙なバランス感覚と残酷な想像力、自分にはないし笑えるくらいの絶望があって好き。「モンスターに僕を殺させないで」っていう息子との約束果たしちゃってるよね。

最後の最後で諦めてしまったことに対する「天罰」なのかなと思ってしまう自分も、超自然に毒されていて怖い。1人目の母が生きていた事に、愛することの希望と、"努力が報われるかなんてわからない"という残酷さを感じた。
四人の血が宗教おばさんの言う通りに、生贄として作用したのかもしれないと感じると絶望しかないけど、霧の正体が「人間の恐怖心や敵対心」だと考えると、最後まで愛を貫いた人が生き残ったのは理にかなってる。
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