RAY

ミストのRAYのレビュー・感想・評価

ミスト(2007年製作の映画)
3.8
“絶望の先”


部長…。
映画を観ながら考えていたことがあるんです。

「あれ?ミュージカル部じゃなかったっけ?」

「音楽も何も無いけれど、悲鳴と言う名の歌声なのかなぁ?」

filmarksのレビューはじめ事前の情報でも、今作が“鬱映画”と呼ばれていることは知っていました。
映画が始まって、タイトル通りの“ミスト”が現れて、それからしばらくの展開については、ことあるごとに、「部長?鬱映画でもないの?ミュージカル部でもないの?」の繰り返しだったんです。

ネタバレするべきでないので、このあとは感想を書いておきたいと思います。


冒頭に書いた通り、この映画を観たことがない、そして何も知らない僕はしばらく画面に向かってつっこんだり、ため息をついたりをしていました。
ですが、観終えた今は感謝さえしています。


人は追い詰められたり、感情が極限に達したりした状況になると、見えていたことも見えなくなったりしてしまう生き物です。
かと言って、とても冷静に物事を見つめ判断している人であっても、気付かぬうちに大切なことを見落としてしまっていることもあります。

このレビューのタイトルを“絶望の先”としたのは、人が生きている時間の中のある“地点”を“絶望”と言う名の霧が覆ったとして、そのことを「ここは通過点なんだ」と思わせてくれたからです。
先に物事を冷静に判断出来る人も出来ない人もいると書きましたが、要はどんな人でも人生の中で“絶望”と呼ばれる(呼ぶ)経験はするのだとあらためて知らされるのです。

この映画においてもとても大事なことであり、映画から得られる学びのひとつと思えることがあります。
この映画の登場人物は比較的多いのです。
そして、主人公がそんなに主人公でないのです(主張が少ないと言うかね)。

もしも世界中が霧に覆われて、目の前が見えなくなってしまった時、その先に何があるのかを教えてくれるのは自分以外の人です。
人の声を聞き、頼ることで見えることも分かることもある。
登場人物が多いと言うのは、そう言ったメッセージでもあると僕は思いました。


この映画は間違いなく“鬱映画”だと僕も思います。
だけど、鬱になるくらい考えさせられることがあると言う意味では、ただの鬱映画とは違うとも思います。


実はこの作品、ミュージカル部の部長様より課して頂いた、ある課題における最初の作品なのですが、なんとなく、この作品が最初に選ばれた意味が分かった様な気がしています。


観て良かった。
RAY

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