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孔雀夫人のtakのレビュー・感想・評価

孔雀夫人(1936年製作の映画)
4.3
ウィリアム・ワイラー監督作は、映画に夢中になり始めた頃からけっこう意識して観ていた気がする。雑誌が名作映画として紹介する記事には「ローマの休日」を筆頭に「ベン・ハー」や「大いなる西部」など名前が挙がる。一方でサスペンスタッチの「必死の逃亡者」や、サイコスリラーの「コレクター」など異色な作品にも魅了されてきた。淀川長治センセイの著作でちょくちょく名前が挙がっていて絶賛されていたのが本作「孔雀夫人」。どんなんだろうと気になっていた。僕が20代の頃、BSで放送されて初めて観賞した。

実業家の主人公ドッズワース氏は長年経営してきた会社を人に譲り、第二の人生を探すべく、妻と世界一周旅行へ。仕事ひと筋だった彼は見るもの全てに興奮しっぱなし。一方、常に若くありたいと願う妻は孔雀のように着飾って毎夜のパーティに興じている。滞在先のパリで妻に恋人ができてしまう。妻はパリに残ると言い出し、夫婦は遂に仲違い。次第に二人の考え方の違いが明らかになっていく。次のウィーンで妻は若い男に言い寄られてのぼせ上がってしまう。妻を残して訪れたベニスで彼はある未亡人と出会う。

ラストの主人公の決断。自分にとっての幸せとは何か。妥協ではなく、幸福を追い求めることの大切さを訴える。とても引き込まれる映画だった。初見だった20代とは違って今の年齢目線だと、奔放な妻だけが悪いのではなくて、夫婦の長年のすれ違いが招いたことだと理解できる。それだけにこの映画みたいな状況ならば、それぞれが幸せになりたいと思うことに理屈なんてない。気持ちが同じベクトルに向かってる人と一緒にいるって幸せ。
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