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ルシアンの青春のSのネタバレレビュー・内容・結末

ルシアンの青春(1973年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦中の1944年、ナチスドイツ占領下のフランスを舞台に描かれた青春映画。

農村の少年ルシアンは貧しい家計を助けるために病院の清掃係として働いていた。5日間の休暇を与えられ農村に戻ると家は人手にわたっており、父親は捕虜、母親は村長の情婦となっていた。
ルシアンはレジスタンスに参加して戦いたいと村の教師(指導者)を訪ねるが、若さを理由に断られてしまう。病院に戻ろうとしたところ、ゲシュタポの本部でスパイと疑われ捕まり、そのままドイツ警察の手先になり祖国フランスへの裏切り行為を重ねていく。

無知な青年が、レジスタンスへの単純な憧れから、ゲシュタポに絡め取られていく過程が見事に表現されている
実在した人物との事だが、事実はまだ調べていない。
主人公ルシアンを演じるのが、実際に野生児で、それまで映画を観たことがない無教養なピエール・ブレーズという青年。彼の演技を超えた自然体、無意識的な残酷さを持った表情が、ある種のリアリズムで描かれる鮮烈さ。(小鳥を打ち殺す、兎の密猟、家畜の鶏を捕まえ素手で頭を落とすシーン等)
ルシアンが出会うユダヤ人の仕立て屋の少女フランスを演じるオーロール・クレマンのデビュー作品で、その悲しみを帯びた初々しい美しさ。

美しいフランスの田舎で、先の見えない逃亡生活を送るなか、束の間の安らぎの中でルシアンが捕まり処刑されたという結末を字幕で伝えるという演出。フランスがルシアンの名前を呼び、返事をしないルシアンが側で見守っている不思議なシーンがある。ルシアンの不在を表す、その虚構のような幻想的なラストが切なく心に残る。
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