調伏系V魔虚羅

ドッグヴィルの調伏系V魔虚羅のレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.7
貧しい村に現れた、一人の美しき逃亡者。村人に二週間以内に気に入られたら、この先も居て良いとの条件を受ける。
保護の代償として昂進する要求に反比例して減っていく報酬。突如として貼り出される手配書の説明欄に”危険“という二文字。警察、追われているマフィア達に突き出すと脅し、金銭や身体を求める男達。皆に対して、無償の愛と親切を与える彼女が人間の醜さに陵辱されるという究極に胸糞悪い展開へと進んでいく、あまりに悲劇的過ぎる運命。「君は冷たくなったね」等とトムが彼女に言うシーンがあるが、変わったのは彼女ではなく紛うことなきトムや村の人々の方だ。トムも彼女の気持ちに寄り添っているようで寄り添っていない、何とも自己中心的で所詮は自らの肉欲を満たす為に行動する村の男と変わらない生き物だった。なんと醜い、なんと強欲。少しの希望さえも打ち砕く衝撃的な結末は終始唖然としていた。閉鎖的な村が故に異常に頑固な集団心理と人間不信を描いた最高峰とも言える傑作。
全編、演劇の様な扉やタンスや椅子などの簡易的な美術セットのみが置いてあるだけの空間で全てが起こる。この村以外の場所はここには存在せず、それが逆に閉鎖的な村を象徴し、彼女に何が起ころうとも見えないふりをする住民の後半の展開に効いてくる伏線。トリアーの監督作としては暗喩が少なく全体的に分かりやすいが、メッセージが明確で心にズシンとくる。
調伏系V魔虚羅

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