Kuuta

ドッグヴィルのKuutaのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
3.4
・小説のダメな映画化のように、ナレーションが多く、ときおり心情描写すら語られる。普通の作品なら胸焼けするところだが、今作は全てが舞台上で、かつ最小限の小道具を使って描かれるため、視覚情報に乏しく、見る側の想像力を補うように言葉が入ってくる。映像の面白さを端から放棄した独特のバランスだと思うが、3時間興味が続いたのはこの手法が機能している証だと思う。

(とはいえ揺れまくるカメラはやっぱりやめてほしい)

・露悪的に人間の嫌らしさを描くこの監督は基本的に苦手なのだけど、今作は旗色の悪くなった作家が「こういうやり方に意味があるんだ」と言い訳がましく弁明する場面もあり、自身の手法も含めて映画に取り込んでいるように感じた。

・主人公がどういう思想の下で動いているのか、なかなか読み取れなかった。最終章の会話で「なるほどこういう対立軸だったのか」と合点がいくと同時に「ベタなテーマの割に時間かけ過ぎでは」と思った。察しが悪い自分のせいでもあるが、もう少し早い段階でテーマを打ち出してもよかったのでは。丁寧な前振りというより、役者をいたぶる事自体が目的と化した構成に見える。

(「オチにスカッとするのは倫理的にダメ」という意見も分からないでもないが、私としては寓話なんだし別に良いのではと思う)

なお、タランティーノは今作について「1992年〜2009年の映画の中ではベスト脚本」と評している。確かに彼の作品には、これとそっくりなものがある。

・15人の村人との密室劇。脂の乗り切ったニコール・キッドマンを始め、キャストがやたら豪華。ローレン・バコール、体は老いても声が全然変わらない。
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