あきらむ

ドッグヴィルのあきらむのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
3.9
トリアー監督って本っ当に人間嫌いだよなぁ。この映画は、人間の悪意の標本図鑑。セットからして、いやらしく、虫のうじゃうじゃいる虫かごの中を無理やり頭掴まれて覗かされてる気分だった。スケルトンな街、チョークで引かれただけのセットだからこそ、人間の悪意が凝縮して見えるのだろう。低予算の発想の勝利だ。

田舎町に突然やってきたマフィアと警察に追われる女、グレース。村で彼女をかくまうことに決め、最初はうまくいっていたが……。とまぁ、ひどいことが起こるんだろうなと思ったら予想以上に酷くてね。まいったね。

監督は女性嫌いとしても有名だけど、男性の悪意にむしゃむしゃと喰われる女に対しては何か抑圧した欲望を持っているんじゃないか。ってくらい「そういう場面」撮るのも上手い。

グレースとトムは共に観測者であり、人間を俯瞰的に、サンプルとして見ている。グレースは進んで身を捧げることで人間を知ろうするが、トムは結局傍観者としてグレースを傷つけるだけで何の進歩もない。トムは出来損ないの学者や作家や講釈師や理屈馬鹿に対する批判だろう。最後のグレースとある男との会話は興味深く、何回も噛み締めて考えたいテーマ。結局、一体誰が傲慢だったのか?私にはこの答えは出せないし、グレースの答えが正しかったのかもわからない。

人間の集団心理を描いた映画として、なかなか面白かったが、あまりにも悪人しかい無さすぎる。グレースさえある意味では……。