これも村ホラーと聞いてワクワクしながら鑑賞。
結論からいうとクソ面白かった。
今までに見た事がないタイプの作品だった。
スタジオ内に、床の図面と簡易的なセットのみで描かれるこの作品は、演劇と映画の中間といった感じ。
ドアなどのオブジェや建物も存在しないので、演技のアカペラ的な感じ。
だかしかし映像を見終わったあと、不思議と脳裏に情景が浮かんでくる……。映像が脳に補完されていくのがわかる。
この映画の凄いところは、村ホラーでありがちな、村人や風習が狂ってるとかじゃなく、全員普通の人々である事。
それゆえに人の根底に隠されてる闇が増幅していく過程がよく描かれている。
偶然村に辿り着き保護してもらったお尋ね者の美女・グレースが、村に真摯に向き合い交流していく事で、次第に村人に認められていくというのが大まかな流れ。
感謝される行為というのは、繰り返すことで「当たり前」になっていく。
その当たり前の行為を怠ると怒りを買う。
そして要求が次第にエスカレートしていく。
村人たちも当初は「ま〜手伝ってもらう事はほとんどないけど……」みたいな感じでそれぞれの役割をこなしてた。
それがいつしか、グレースがいないと村のサイクルが廻らなくなっていた。
村民も怠惰になり、攻撃的な態度に変貌。
この過程がリアルで怖い……。
上記の件もじわじわと精神を蝕んできて嫌な気持ちになるけど、それに加えて主観の恐ろしさも描かれている。
あの子持ちヒステリックババァ視点でグレースを見たら、息子に暴力を振るい、夫を寝取る最悪の女に見える。
リズだって、自分は村1番の人気者のマドンナ的存在だったが、どこぞの八方美人の女狐が色んな男に色目を使い、自分には男が見向きもしなくなったと思うだろう。
リンゴ男からしたら甘い言葉で自分を誘惑してきたクセに、いざ行為を迫ると断るグレース。当然憤る。自分を手懐ける為の甘言だったのかと。
そうした一人ひとりの主観が周りに吹聴する事によって事実を歪曲させる。
視聴者は物語を俯瞰で見れるから事実もわかる。
しかし当事者は自分で感じたモノが真実だと思い込んでしまう。
現実世界でもだいたいこんな感じだからクソ怖い。何事も客観性を持たなければ……
グレースが今までに積み上げてきた信頼、献身、努力。
それが形として現れたあの小さなフィギュア達。
それを我が子のように思っていたグレースのあのシーンはマジで悲しかった……
ラストシーンへの伏線だったのはアツい。
何度殺せ!殺せ!と思ったことか……
最後にパパが言ってた言葉。
「こいつらは犬だ」
この言葉に尽きる。
犬=本能=村人の業
本性に正直過ぎた村人。
人の本性を体現したような村。
それがDOG・vill(age)
それぞれの罪を認めない、自己保身の塊である村人たち。
老夫婦の偽物のガラス細工のように、いくら取り繕ってても簡単に壊れる。
人間は脆いのだ……
メイキングインタビューでジィさん役の人が「主よ、誓います。あの狂った監督とは二度と仕事をしねぇ」って言っててガチで草生えた。
とにかく、こういう独創的でエグい作品は死ぬほど好き。