Netflixで配信が始まったジム・ジャームッシュの初期監督作品。2本目は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」。ちなみに日本での公開は「パーマネント・バケーション」よりもこっちが先である。
当時のアメリカ映画と言えば「ゴーストバスターズ」や「フラッシュダンス」みたいにポップな作品ばかりだった中で、全編モノクロの本作は衝撃的だった。とは言っても、テレビで宣伝されていたわけではなく、バイトの先輩に勧められて観たような記憶がある。あくまで一部のお洒落な人達が楽しむ感覚。それが後のミニシアターの台頭に繋がっていく。
「パーマネント~」に続いいて、本作でもジョン・ルーリーが主演。その相棒もソニックユースの初期メンバーだったリチャード・エドソンが演じている。有名俳優ではないからこそ生まれる、ニューヨークの日常的な生活風景。
本作の時代設定が議論される事があるけど、いやもう、単純に'80年代前半のリアルタイムという事で良いと思う。先に挙げたようなメジャー映画とは違い、古着や中古車を使いこなす、ちょっとこだわりの強い人達が登場するから時代設定が分かり難いだけなのだろう。
というか、従来の映画に登場する事が無かった若者の姿を格好良く撮ったから本作は評価されたのだと思う。同じ時期に日本でも古着屋が増えた。僕もジョン・ルーリーが着ているようなジャケットを買った記憶がある。彼が食べる「TVディナー」は当時のロック系のヒット曲でもタイトルになっていた。
ジャームッシュ作品を指して言われる"何も起きない"は、本作に於いて顕著ではあるけど、あくまで当時のメジャー映画との比較から生まれた形容であって、多様な映画表現が生まれた現代の視点で観ると、これはこれで"色んな事が起きている"と思える。ニューヨーク→クリーブランド→フロリダをめぐるロードムービーとしての趣き。
スクリーミン・ジェイ・ホーキンスのダミ声ブルースが豪快に響き渡る。