インディーズ映画の金字塔で有名な今作。ずっとタイミングが合わず、レンタルショップでいつも歯痒い思いをしながらパッケージだけ眺めて他の作品を借りていたのだが、今回ようやくDVDをレンタルすることが出来た。
ざらつきのあるモノクロ映像で、淡々と物語は進んでいく。ドラマカテゴリーの映画でお決まりの〝何も起こらない〟という現象。まさにこの作品がそれ。何も残らないし、寧ろ、何も残そうとしていない。
主人公ウィリーは、ハンガリーからアメリカに来た男。主にギャンブルで生計を立てている無職人間。ハンガリーからやってきたにしては、アメリカンドリームなんて言葉が彼に1番似つかわしくないほど、向上心も、上昇志向も持ち合わせていない。その日暮らしを望んですらいるようにも思える生き方。何にも縛られずに生きる自由を謳歌しているように見て取れる。
アメリカという地に、完全には溶け込めていないハンガリー人(=ストレンジャー)ウィリー。
ちぐはぐなウィリーという存在が妙に面白いのだ。
この映画を語る上で絶対に外せないのがスクリーミン・ジェイ・ホーキンスのI Put a Spell on Youという曲。耳に残る歌声のお陰で、映画を見終わった後曲をダウンロードしてしまったほど、不思議と印象深い。がなるような歌声がこの作品をオシャレな作品に仕立て上げている。
最後に見事なほどすれ違ってしまった3人。かったるそうな顔のエヴァがなんとも筆舌しがたい。
前編を通して可もなく不可もなくな感想しか持ち合わせなかったが、この映画が注目を集めた理由がわかった気がする。不思議な魅力が詰まったジム・ジャームッシュの作品。眠気覚ましをご準備頂きながら是非見てほしい。