みおこし

欲望の翼のみおこしのレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
3.8
1960年、香港。実の親を知らないヨディは心に傷を抱え生きていた。ある日サッカースタジアムで売り子をやっているスーと恋仲になるが、彼女が結婚を求めると別のミミという女性に想いが募り出す。その一方で、ヨディの友人の警官タイドや幼馴染のサブはそれぞれスーとミミに恋をし...。

ウォン・カーウァイ監督の代表作の一つ。鳥肌ものの豪華キャストの若き日を観られるなんて眼福の極み。
全体的にグリーンがかった画面に、1960年代当時の香港を舞台にした群像劇が生々しく浮かび上がります。低い天井や高速で回る換気扇、小さな窓から差し掛かる木漏れ日まで、些細な演出がとにかく生活感があってリアル。なのにこの冴え渡る情緒は何なんでしょう、オシャレすぎる...!本当にカーウァイ監督は光と陰の使い方が天才的ですね。

レスリー・チャン演じるヨディ中心に、皆が皆片思いの連続のストーリー。面白いくらいに両思いのカップルが完成しないのでもどかしくなります。
ヨディはなかなかのダメ男だし、それに振り回されるスーとミミもかわいそうで観ているうちにどんどん切なくなって来るんですが、唯一の救いがアンディ・ラウ演じるタイドとジャッキー・チュン演じるサブの存在。傷ついた女性陣をひたむきに思い、癒す重要な役柄でまさにハマり役。
人ってこうも不器用な生き物で、なかなか思い通りの恋愛ができないんだなとしみじみ。素直になれない男女の、まさにありのままの姿を捉えたお話にどんどん引き込まれていきました。
BGMもぴったりだし、セリフもいちいちカッコよくて病みつきになりそう。

当時の香港映画の中では圧倒的に映像美とスタイリッシュさを誇る傑作、ウォン・カーウァイが本作で世界に名を轟かせたのも納得の作品でした。

続編が作られる予定だったそうですが、立ち消えてしまった様子。そのため、あっとびっくりの短さのトニー・レオンの登場シーンに少し面食らってしまいました(笑)。
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