菩薩

欲望の翼の菩薩のレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
4.3
「1分間だけの友達」から「1時間の肉体関係」への欲望の翼の広げ方が秀逸だし、イヤリングの片方を使用した女の引っ掛け方もその手があったかと心の中でいいね!を押し続けはしたが、結局のところ香港のさちもすのよんすでやんすみたいな顔面スペックを持ち合わせていなければ不可能な方法である事に途中で気づかされたため、俺はきっと近日中に少し高めの所から飛び降りると思う。欲望の翼を目一杯に広げ、希望の風に乗り、この広い大空に、夢を抱いて飛び出したは良いが、風向きが変わればどこに飛ばされて行くか分からぬ糸の切れた凧のように、そしてそもそも着地を念頭に入れずただ空高く飛ぶ夢だけを追いかけていればもちろんあぁなるわけで…巻き込まれる人間達はそりゃあ可哀想だ。地に足をつけそこに根を張り生きていく、そんな生き方が本当はしたかったのだろう、だが彼は一度どこかに居ついてしまったら、また再び飛び出せる自信が無かったのではないだろうか。それでも母を訪ねて三千里、そんな微かな希望も砕かれ見事に墜落、最後に目にする景色はあのフィリピンの原生林の様に青々と何かが繁っていただろうか。湿度の高さを一気に冷ますトニー・レオン、これは世界の末端の出来事、彼がいなくなったところで、世界は何も変わらない。けど彼女の心の中のあの1分間は、永遠に時を刻み続ける事だろう。
菩薩

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