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13号待避線より その護送車を狙えのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 夜の帳の中、照準器から狙う殺し屋の姿。何も囚人の護送は夜でなくともと思うが、刑務官の多門(水島進太郎)は複数の囚人たちをたった一人で護送していた。やがて多門は夜の暗闇の中に浮かび上がる女の姿を確認する。田舎町の1本道を鈍重な護送車はゆっくりとだが安定した道のりを走るが、急に死角からトレーラーが落ちて来る。怯んだ隙に四方から囚人めがけて弾が飛ぶ。こうして囚人2人はその場で銃殺され、強奪された責任を取らされて多門も刑務官の職を半年間停止の憂き目にあう。いったいなぜ、誰がどのような目的で囚人たちを次々に撃ち殺したのか?疑問に駆られた多門は半年間の職務停止処分中に一人で独自の捜査を開始する。多門はまず、襲撃された車に乗っていてすぐに保釈された五郎(小沢昭一)に目をつける。彼の足跡を追いながら熱海に降り立った多門は、ストリッパーを斡旋している浜十組を訪れ、今は組を切り盛りしている娘の優子(渡辺美佐子)と対面する。

 冒頭からめくるめくようなアクションの乱れ打ちが凄まじい。ひっくり返った護送車に代わり、車は東海道線の列車と並走したかと思えば、ガードレールから若者が転げ落ちる。クライマックスの舘林の停車場まで鉄道マニアご満悦のアクション・シーンが並ぶ。五郎が背負う「Uターン禁止」のワッペンにも明らかなように、映画は常に前に前にと性急に進み、一度も出来事をゆっくりと振り返ることなどない。だが事件を追う生真面目な多門の背中を苦々しい表情で赤堀(安部徹)が見つめている。いつも蓮っ葉な女の姿が印象深いが、今回は優子よりもストリッパーの津奈子(白木マリ)の方が幾分強烈で、ロカビリー族と街角で歌ったかと思えば、崖の上でぐるぐると逃げ回るのだ。組織を束ねることになった優子の呪縛は結局のところ、父親のような男に縋ることでしか真に満たされない。ニヒルというよりも堅物といった性格の主人公だが、優子の情により徐々に組織の歯車が崩れて行く。「アキバのダンナ」とは果たして誰なのか?物語はその1点だけで過剰に引っ張りながら終幕を迎える。結局、なぜ冒頭に囚人2人が殺されなければならなかったのかは謎のままで、凄まじいアクション映画を観たという印象だけが残るのだ。
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