安堵霊タラコフスキー

みかへりの塔の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

みかへりの塔(1941年製作の映画)
4.9
導入の説明からブニュエルとかだと施設の闇とか描かれそうだと思ったけど、清水宏の作品だと施設での生活とちょっとした問題を淡々と描いていて安心した。

キアロスタミの先祖みたいなカメラワークとドキュメンタリーが混ざったような演出も相変わらず見事で、特に駆ける少年少女らの姿がとにかく素晴らしく、飾らずに対象を赤裸々に映す作品って良いよなとつくづく思う。(ジグザグな坂道が出てきたのはさすがに驚いたけど、キアロスタミが小津と共に清水宏を本当に敬愛していた可能性も高くなってきた)

人間の成長譚でも過剰な演出が一切無いからこそ素材の良さが生まれ、素直に感動できるということがこの作品を見ているとよくわかる。

画質も音質も他の作品と比べて悪いように思えたのは残念だけど、逆に言えばそれだけ優れた作品ということだし、毎度言っているようだが清水宏はやはり頗る良い。

しかし大量の子供たちを養って擬似家庭を設けるような施設が実際戦後の日本にあったとは中々驚き。