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カンフーハッスルのtakのレビュー・感想・評価

カンフーハッスル(2004年製作の映画)
3.0
これは愛の映画だ。偉大なるカンフー映画の先達たちへの限りなき敬意と愛の結晶なのだ。日本における時代劇と同じく、製作されることすら減ってしまった香港映画のお家芸。それは真の武術家たちが映画を活躍の場に選ばなくなったこともあるだろうし、そうした人々がいなくなりつつあるからだ。これはニッポンも同じ事。そこで我らがシンチーは声をあげた。「何故誰もブルース・リーの話をしなくなったんだ!」そして自らがカンフー映画をつくることでその思いを世に知らしめたのだ。コメディという彼のフィールドで、SFX技術という現代の技術で、やりたいことをやりたいだけやったのだ。いいゾ!シンチー!。僕らは彼のそのガッツに拍手を贈ろう!。

 墜ちるところまで墜ちながらもはい上がって勝利をつかむ・・・そんな本来カンフー映画にありがちな”復讐劇”というスタイル。「少林寺三十六房」だって「酔拳」だってそうだ。「少林サッカー」はその伝統を違った形で活かしたのだが、「カンフーハッスル」ではそれを避けている。豚小屋砦で戦う面々は、身に降りかかった危機に向かっているだけで、復讐という要素はない。やるところまでやらない、シリアスさがない、とつまらなさを感じた人ももしかしたらいたのでは。

でもよーく考えよう。シンチーはブルース・リーになりたかったのだ(ファンクラブの会長でもある)。ラストの死闘で彼が身につけているのは「燃えよドラゴン」でブルースが身につけていた衣装にそっくりだ。ブルース・リーの映画に復讐という要素があっただろうか。「怒りの鉄拳」だって「死亡遊戯」だって「ドラゴンへの道」だって降りかかる火の粉をはらっただけのお話じゃない。キャンディー屋台だって「ドラゴン危機一髪」のノラ・ミャオを思わせはしないか?。実はこんなところでもブルースへのリスペクトがあるようにさえ思われる。ただその思いばかりが全面に出て、「少林サッカー」程の感動に結びついていないのも事実。
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