なべ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qのなべのレビュー・感想・評価

2.8
 シン・エヴァのレビューを書くはずが、思いのほか気持ちがほとばしってしまい、なかなかシン・エヴァ本編に辿り着かない事態に(笑)。なので前半をエヴァQのレビューとして記すことにした。

 テレビアニメ版が始まったときはすでに社会人だったので、さすがに夕方の放送を観るわけにはいかず、LDを定期購入して(金はあったw)楽しんでた大人なリアルタイム組。いい大人だったのでオタクのようなクローズドな楽しみ方はせず、作品内で構築された世界観やジェネレーション観などをプレゼン等で活用し、「今どきの若者をよく知る者」と思わせることにまんまと成功した思い出深い作品w
 最初は違和感のあった絵柄も回を追うごとに慣れ、レイ、アスカ、ミサトさんやリッちゃんなどの生き様を通して、意地や絶望、羞恥といった大人の負の感情を味わうこともできた。
 もちろん作品内に散りばめられた数多くの謎にも果敢に挑戦したよ。まだ、インターネットの前身のパソコン通信の時代で、ニフティにはクオリティの高いネタバレ考察や頭のいい解説など見当たらず、自力で調べ考えることで、教養(雑学)の外枠が大いに広がったのもエヴァのおかげだと思ってる。
 だから最終2話での裏切りには納得いかず、断片的なカットから本来描かれるはずだった物語を夢想し、ああ、そんな話ならぜひ観てみたかったとほぞを噛んだものだ。
 そうして「Air/まごころを、君に」が上映された時(製作が間に合わず、お茶濁し作品でまた裏切られる経験も!)には、長年の不満というか積年の恨みが解消されて、ぼくのエヴァは完全に閉じられたのだった。
 なので新劇場版は懐かしさ以外のものはなく、アップデートされた描画に感動こそすれ、それ以上でも以下でもなかった(悪く言えば、金儲けのための復活イベントだと割り切ってた)。
 ところが破の最後に発動するサードインパクトと、続く予告編でそれを槍で阻止するカヲルのエヴァ6号機、エントリープラグのLCL内で溶け合う綾波とシンジがサービスされるや、うわああああ、超観てえぇ!と激しく動揺し、エヴァ熱が再燃したのだ。同じ思いをしたオールドファンはさぞ多かろう。
 かくして臨んだエヴァQで、何度も煮え湯を飲まされた裏切り行為をまた味わったのである。懲りないなあ、自分。
 庵野が病んでいたのを差し引いても、Qは作品として不誠実であり、繰り返された裏切りの中でも最大級の不実だったと今も思っている。
 おまえだれ?な新メンツ、何もわからないシンジに頑なに何も教えない周囲の大人、魯鈍なデザインのヴンダーと、紡ぎ損ねた物語の悲鳴のような軋みがそこかしこに感じられ、観ているのが辛くなった。
 同じものはつくりたくない、同じ展開は描きたくない、それはわかる。わかるが、そもそも旧劇場版で終わった話をリビルドしてる時点で焼き直しなわけなんだから、そこは覚悟を決めて、旧世界をなぞりながら再構築された世界を描いて欲しかった。
 ところが、そんな欲求不満はシン・ゴジラで見事に解消され、これこそぼくの求めていたエヴァの続きだと変な満たされ方をしてしまったのだ。
 エヴァはこんなにも次の世界へと広がろうとしているのに、エヴァ本編は執拗にその進化・発展を阻もうとしている。もはや呪いだなと、そんな思いにかられたのがエヴァQだ。
 何度観ても内容を忘れてしまい、見るたびに新鮮な気持ちで鑑賞できるのはいいが、その場足踏みしてるだけの物語からは何も得られるものはなく、頼むからとっとと終わってくれと願うような気持ちでシン・エヴァに臨んだのだった。

予告
四半世紀わたって追い続けたエヴァ。長い物語の終焉になべは何を思い何を願うのか。ネタバレせずに書けるのか。次回シン・ヱヴァンゲリヲンのレビューは厳しくサービスサービスぅ。
なべ

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