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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの教授のレビュー・感想・評価

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前作「破」で、庵野秀明は、意図的に「期待に応えるよう分かりやすい展開」など微塵を描く気がない、という覚悟を感じたので(しかも、それは飄々としつつ強い決意に感じられた)本作は更に飛躍と、超絶的な展開になると思った。
どんどんと加速していく「新」ヱヴァンゲリヲンの物語。

混沌とした展開!と思ったら見事に裏切られた。謎は相変わらず多く、ある意味では難解に一見見える作りでありながら、TVシリーズなど引っくるめて本作が一番わかりやすかった。
まず前作の最も優れたところとして過去TVシリーズや劇場版以上に、ヱヴァンゲリヲンとされるロボットでも生物でもなく、また、それでもあるという「へんないきもの」の概念的なものを下手な説明をせずとも対決シーンのみで何となく伝えていて、またATフィールドという特異な設定も同様、戦闘シーンや最後の「サードインパクト」部分で視覚的に上手く伝えていたことなど描写の力が過去に比べて格段に上がり、その分物語が実はスッキリとまとまっている。

本作はそういったディテールや人物配置が多層的でありながら実はあまり混乱してなくて、むしろ整理されていて急激に完成度が高くなっている。
劇中で説明されないが、旧ネルフと、新組織「ヴィレ」との対立の構図はまさに、全ての死を以って世界を道連れにしようというメンヘラと、それでも貪欲に生きていたいメンヘラとの対立構図として物語の骨格になり過去最高に分かりやすくなっている。
それを説明によるセリフを廃し、バトルシーンや端々に感じさせる描写と物語の推進力でのみ押し切った力技によって過去にないエヴァの世界を切り開いている。

この過去にない分かりやすさをカモフラージュするかのように理不尽で鬱展開も含めて「ヱヴァンゲリオン」としか言いようのない世界観に仕上げた本作はまさに「新作」として堂々たる風格。

いや、ほんと。これ、最高に面白かった。
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