映画ネズミ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの映画ネズミのレビュー・感想・評価

4.0
向いている人:①『序』『破』を見ている人
       ②ロボットアニメが好きな人
       ③美少年のアニメキャラが好きな人(?)

 さて、「エヴァ」レビュー、とりあえずの最終回。今回は『新劇場版』3作目『Q』です。NHKのBSで今週末放送なので、フライングですが……(滝汗)

 もちろん、これまでの2作『序』『破』を見ていることが大前提になっておりますので(エヴァを一切知らずに、いきなりここから見た人の感想も気になりますが)、2作を見てからチャレンジしてください!

 今回も、とにかく内容盛りだくさんですので、テーマを分けてお話しします。


1 あらすじ、映画のスタイル(ざっくりと)

 碇シンジは、秘密組織「ヴィレ」に保護される。そこには、かつて共に戦ったミサト、アスカ、そしてマリの姿もあった。しかし、彼らは、なぜかシンジのことを嫌悪していた。シンジは、最強の使徒を倒してから14年経っていることを知る。その間に何があったのか分からず、当惑するシンジ。そこに、NERV(ネルフ)のエヴァンゲリオンが攻撃を仕掛けてくる。そして、シンジは謎の美少年・渚カヲルと出会う。

 前作『破』から3年後に公開された本作は、前作『破』の後から始まります。前作で、最強の使徒を倒し、綾波レイを救出したシンジ君ですが、本作ではただひとり、仲間たちのもとに帰ってきます。

 でも、なぜかみんな冷たい。さらに外の風景は、地面は赤くなっていて、人が生きている気配もない。

 そして、薄着で缶ビール飲んでいたミサトさんは、サングラスを掛けた冷徹な指揮官となり、シンジ君やミサトさんが所属していたはずのNERV(ネルフ)は、ミサトさんと敵対している。さらに、初めて出てくるメカの数々。

 え? 何で? どういうこと? 何があったの? 救い出した綾波レイはどこ? そういう疑問がロクに解決されないまま、戦闘が次々と発生し、周りの状況が激変していきます。まるで「浦島太郎」です。

 本作の展開は、元のテレビシリーズからは完全に外れていて、今までのエヴァを見ていた人も、「新劇場版」から見た人も、誰も分からない話になりました。

 もちろん、これによって、観客はシンジ君と同じ立場で、物語に入り込むことができるのです。

 相変わらず、初めて聞く用語が飛び出し、入り組んだ設定めいたことが次々と語られ、合間に異常にハイテンションな戦闘シーンが挟み込まれる、エヴァ独特の展開が本作でも楽しめます。

 ところが、後半は、さらに目も当てられない鬱展開が待っています。ここは、実際に見て確かめてください。


2 主要キャラ

 父親・碇ゲンドウも、やや父親らしく見えた前作から一転、冷酷非情な男に逆戻り。シンジ君と再会した時の言いぐさ、その後の対応含めて、完全に児童虐待ですよ。ヒドイぞ!!

 そして、『序』『破』ではラストの一瞬だけ登場した美少年・石田彰……じゃなかった、渚カヲルが本格的に登場します。

 初見の方に彼の役割を説明すると、彼は、周囲から心を閉ざしたシンジ君の心の支えになっていくキャラです。風貌、声の調子、セリフからして、どう見ても「狙っている」キャラですが、シンジ君は彼と関わることでどうなっていくのかに注目してください。


3 『Q』を見て思う、「エヴァ」全体のテーマ、そして『新劇場版』のテーマ

 本作のテーマは、元のテレビシリーズから一貫して「世界との向き合い方」だと思います。

 元のテレビシリーズは、「傷つくくらいならひとりでいたい!」と思っていたシンジ君が、様々なヒドイ目に遭って、その思いを強くするのですが、「傷つくことはあっても、やっぱりみんなといたい!」と思うまでのお話でした。「自分の心と徹底して向き合うことで、世界との向き合い方を見つける」お話とも言えるかもしれません。

 本作は、出発点は同じなのですが、『破』『Q』と、彼のたどるドラマが、ずいぶん違います。『破』で、「人と関わること」に積極的になったシンジ君。

 しかし、『Q』で、その代償が明らかになります。シンジ君が、それとどう向き合っていくのかが、『Q』のテーマです。

 本作は、「シンジ君が、自分の決断と行動に向き合うことで、世界との向き合い方を知り、大人になるまでのお話」になっていくのでしょう。

 本作のタイトルと同じ、「君はやり直すことができる(かもしれないし、できないかもしれない)」お話なのだと思います。

 でも、「やり直す」ことが正解なのか? とも思ってしまいます。失敗は、誰しもあることです。時には、何かに夢中になっていて他をおろそかにしてしまうこともあります。でも、それを含めて人生ではないでしょうか。

 「やり直して解決する」「死んで解決する」という安易な展開が流行っている昨今のアニメ界。本作の流れからすると、自分の行動(失敗)と向き合い、それを受け止めることが成長につながるという話になっていくこともあり得る気がするのですが、果たしてそういう結論になるのかどうか、次回作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に持ち越しですね。


4 終わりに

 前作『破』のカタルシスを完全にぶち壊す「地獄編」ですが、元のテレビシリーズにもあった、エヴァのもう1つの側面である「心理面」を掘り下げる意欲作だと思います。

 ちなみに、本作は公開時、『巨神兵東京に現わる』という、「風の谷のナウシカ」の巨神兵が現実の東京を襲う内容の、実写特撮の短編映画が同時上映で付いていましたね。内容は謎でしたが、今見ると『エヴァ』っぽいというか、『シン・ゴジラ』っぽいというか。そういうところも含めて、庵野秀明スタイルが炸裂している短編でしたね。

※『ふしぎの海のナディア』という、庵野秀明の昔のテレビアニメの要素が強いというお話がありますが、私は見たことありません。見なくても、ストーリーは分かると思います。何より、見たら分かるという確信もありません(滝汗)
映画ネズミ

映画ネズミ