だいすけ

メリエスの素晴らしき映画魔術のだいすけのレビュー・感想・評価

4.5
ほんと素晴らしいの一言。ため息出る。

まず「月世界旅行」本編について。メリエスの作る映画は、演劇の枠組みの内部に限定されているかもしれない。しかし僕は無限に広がる映画の可能性をそこに見た。本作は、映画におけるフロンティアと、人類にとってのフロンティアが、奇跡的に調和した傑作だと思う。映画が飛躍的な進歩を遂げ、人類は月に到達した現在においてもなお、本作にはロマンを感じずにはいられない。当時に思いを馳せると、革新的な技術によるSFを見慣れてしまった現在の観客に、初心を思い出させてくれるだろう。つまり、生まれて初めてSF映画を観たときの感動を喚起されると思うのだ。そして何より、映画の可能性を見たメリエス自身の高揚感を本作から感じとることができる。

ストーリーは非常にシンプルとはいえ、SF映画のプロットの典型となっている。映像の面でも、群衆が生みだすリズムは印象的。これはメリエスの映画が演劇的たる要因の一つではあるが、現代の映画にはない面白さがある。

後半はメリエスに関するドキュメンタリーとなっている。特に「月世界旅行」を修復した経緯に関するシークエンスは感心した。メリエスの素晴らしい作品を堪能できるのも、膨大な作業をこなした映画関係者の功績だ。気の遠くなるような作業にもかかわらず、彼らの目は輝いていた。彼らもまた、メリエスの魔法に魅せられ、ロマンを探求した人間の一人なのだろう。
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