こたつむり

ヒドゥン・フェイスのこたつむりのレビュー・感想・評価

ヒドゥン・フェイス(2011年製作の映画)
3.6
軽挙妄動が行き着く先は悲劇という名の喜劇。
もしくは、人を呪わば穴二つ。

なかなか見応えのあるサスペンスでした。
恋人に捨てられた男性《アドリアン》と、そんな彼への同情から恋に堕ちる女性《ファビアナ》。しかし、アドリアンの元恋人が行方不明と聞いたファビアナは、自分の中の“疑心暗鬼”が波紋のように広がっていくことに気付く…という物語。

物語中盤までは。
正直なところ、惜しみなく脱ぐファビアナの“肢体だけ”が見どころの映画…という印象でありました。まるで少年のようにスレンダーなスタイルは賛否両論あるかと思いますが、彼女が持つ雰囲気は素晴らしいものがありますからね。寝室や浴室の場面で鼻息荒くなるのも必然と言えましょう。

しかし、本作の真骨頂は中盤以降。
ただのエロティックサスペンスではなく。
足元からぞわりと満ちる冷気。
点と点を結んで象られる妄執。
右斜め後ろからの斬撃にぐわんぐわんと揺さぶられるのです。

うん。
これはなかなかの力作ですよ。
物語の構造が単純だから深くまで書けないのが残念ですが、男性よりも女性向きの作品だと思います。また、出来る限り、事前情報は仕入れないほうが楽しめます。まあ、それでも、期待が大きすぎると裏切られるのが世の常。期待値は低めで臨むことをお薦めします。

あと、あえて難を言うならば。
“生体オートマッピング機能”が備わっている人には、合点がいかない描写が含まれています。実生活においては有効な機能だと思いますが、物語を楽しむときはOFFにしておきましょう。

まあ、そんなわけで。
本作のタイトルを直訳すれば“隠れた顔”。つまり、誰しもが持つ“隠れた一面”が招いた物語。
はたして、本作で“隠されている”のは一体何なのか?“隠れた”逸品であるスペイン産サスペンスを、どうぞ。
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