Myon

ミステリーズ 運命のリスボンのMyonのレビュー・感想・評価

3.6
ポルトガルを中心にイタリアやフランス(プポーさんやセドゥさんの出番がちょっとだけ)をまたにかける19世紀の群像劇。スタート地点は神父と彼に保護されている孤児の少年。彼らの出生の秘密と人間関係がさらなる秘密の連鎖を生む。

話し手と聞き手を次々に変えつつ、人々が自分の秘密を語る形態というだけでミステリー(推理物)ではない。舞台仕立ての上品なメロドラマで、構図の妙と丁寧なカメラワーク、細やかな美術のおかげでまるで当時の人々の生活を覗き見しているような趣がある。何より強い明暗と計算された配色が素晴らしく、バロック絵画の連作を見ているような気にもさせられるが…。

内容が詰まっているうえ、間をカットしない文学的な作りは余裕がないとキツい。個人的には長いからこそラストで感じる哀切に胸を打たれたし、曖昧な後味も好き。鑑賞後前編の冒頭に戻ってみると色々納得できる作りも良かった。
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