安堵霊タラコフスキー

ミステリーズ 運命のリスボンの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

4.7
ラウル・ルイスが最晩年に遺した大作をようやく鑑賞。

某海賊漫画みたく様々な人物の回想を挿入した、入れ子構造の連続となっているため4時間以上の大作と化した感があるけど、美麗な長回しはソクーロフを髣髴とさせるものがあり見ていて実に心地良かった。

時折挿入される紙芝居的演出も、ただ独特なだけでなく主人公のアイデンティティを表すものにもなっていて、良い試みだったように思う。

そして一番印象に残ったのは、細かいところではあるが主人公の母親が過去を明かそうとして躊躇うシーンで、その躊躇う場面でちょうどよく不穏な曇天に切り替わったのだけど、あれを意図的に撮ったのだとしたら相当根気と計算が必要だったことを思うとその拘りに脱帽するし、偶然だとしてもその運の良さに舌を巻くし、どちらにせよあそこは地味に凄いシーンだった。

ラウル・ルイスのキャリアの集大成として相応しい力作ではあったが、劇場で見ていたらその長さと緩慢な空気でウトウトして途中混乱したかもしれないから、これは休憩を挟めるDVDで見て正解だったろう。