ベティー

情熱のピアニズムのベティーのレビュー・感想・評価

情熱のピアニズム(2011年製作の映画)
4.0
身長1mほどの小さな体から生み出される、とてつもないグルーヴと推進力。

湧き出るフレーズとドラマチックなアドリブ展開。
時にメロディアスで時にブルースで、ロック的でもあり、そこには音楽への限りない愛情から強烈に溢れ出すエモーションがある。

先天性骨形成不全症という難病のため極端に骨がもろく、生まれた時には全身の骨が折れていたという脅威のジャズピアニスト。彼の名前はミシェル・ペトルチアーニ。

だれが骨折しながら演奏するピアニストを想像できるだろう?
時に現実は映画よりもドラマだ。

これは彼の人生の断片を知人や奥さんやミュージシャンが語ったドキュメンタリーで、本人のインタビューも多数入っていて、ファンならぜひみるべき。

でももしファンでなく、この映画に興味をもったのなら、この映画を見ないでYoutubeかCDで曲を聴いてその演奏を感じるべき!

というのも、演奏シーンはかなりすくなめだし、やっぱり音楽は見たり語るもんじゃなくて感じるもん(って身もふたもないですが)。もしファンになったならあらためてみるといいと思う。

女装してふざけたりするプライベートな彼が見れるし、すごく活動的でいい。。

人生には限りがあるから、人は懸命にもがくことができるという言葉はよく聞くが、彼の場合20才まで生きられないだろうといわれていて、文字通り自分の人生の限りを見据えて生きていたわけで。そのことが彼の人生観や生き方、果てはプレイにどう影響したか、平穏で平凡に生きる機会を与えられた僕らには計り知ることなどできないけど、、、残された彼の最高の音源からなにかを感じることはできる。この映画からもしかりで。私はジャズに限らず音楽好きで、楽器もやるしジャズもやるけど、ミシェル・ペトルチアーニは別格の最高峰のミュージシャンの一人。

不満や愚痴を口にしたとき、他人を批判したり、誰かに自分を否定されたときには、彼のこの言葉を思い出す。

「何が不満なんだい? 僕を見て! 僕は大丈夫だ! 僕は楽しんでいる!」
ベティー

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