アキラナウェイ

荒野の誓いのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.6
「ファーナス/訣別の朝」のスコット・クーパー監督×クリスチャン・ベイル主演。寄り道して良かった。あちらも渋かったけど、こちらも渋い。

スコット・クーパー監督、良いな。
「ブラック・スキャンダル」
「クレイジー・ハート」辺りを次に観てみよう。

原題"Hostiles"とは、"敵対者"の意味。

「昨日の敵は今日の友」なんて言うけれど、そんな昨日今日で積年の思いが消える訳じゃない。

でも、この作品で僕らは目の当たりにする。
長い長い旅路の果てに、憎み合っていた者同士が心を交わす瞬間を。

1892年。かつてのインディアン戦争の英雄であり、先住民戦犯収容所の看守ジョー・ブロッカー(クリスチャン・ベイル)は、末期がんに侵されているシャイアン族の長イエロー・ホークとその家族を彼らの故郷で今は居留区となっているモンタナ州まで護送する任務に就く。

互いに大切な友を何人も殺された敵対者。

最も憎むべき者を護送しなければならないという葛藤はジョーを苦しめる。

大地に膝から崩れる様にして叫び声を上げるジョー。許し難い感情が如何に彼を支配しているかを捉える重要なシーン。クリスチャン・ベイルの緩急をつけた演技が見事。

ジョーが率いる遠征小隊は、イエロー・ホークとその家族を連れて旅立つ。途中、コマンチ族により、愛する家族を皆殺しにされた未亡人ロザリー(ロザムンド・パイク)と出会い、彼女を保護する為、旅に同行させる事に。

ロザムンド・パイクの鬼気迫る演技に圧ッ倒される。只者ならぬ女優だわ、パイクさん。

そして、恐るべしコマンチ族。
頭の皮を剥ぐシーンが壮絶。

あまり出番がないまま退場しちゃうティモシー・シャラメくんや、いつも狂気じみた演技が最高のベン・フォスターなど、脇を固めるキャストも素晴らしい。

荒涼とした大地を征く彼らの旅路。
それは時にスリリングで、
時に静かに叙情的で。

憎み合っていた敵対心が
雪解けの様に、
静かに薄れていく経過を実に丁寧に描いている。

偏見や差別も、
怒りや憎しみも、
いつしか解り合い、許し合える時が来る。

ラストシーンがまた素敵で、これはかなりのお気に入り。