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SHAME シェイムのryoのネタバレレビュー・内容・結末

SHAME シェイム(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

セックス依存性の兄と境界性パーソナリティー障害(と思われる)妹が社会の中でボロボロになりながら必死に溶け込んで生きようとする物語。
故郷のアイルランドを何故か捨て、アメリカで生活する兄妹。(映画もイギリス映画だがアメリカが舞台)
壊れているように見える兄妹だが、アメリカに来る前に何者かに『壊された』であろうことが何となくほのめかされる。しかしその部分は明確には説明されない。壊された後だって兄妹の人生は続くのだ、ということが重要なのかなと思った。

職場PCにポルノ画像を大量に保存していたことがバレて、主人公は上司の男に『下劣』と罵られる。しかし、その上司も主人公がうんざりするほど大概『下劣なクズ』だったりする。この二者で何が違うのかと言えば、「社会に下劣を隠し通せているかどうか」に過ぎない。本質はそれほど変わらないのに依存性の主人公は『下劣』をコントロールし、隠すことが難しい。

妹に寄りかかられて、社会から堕ちていくことを怖れる主人公は、唯一の家族であっても妹を拒絶する。
社会に溶け込めなくなること。『普通』でいられなくなることは『恥』だから。
『恥』をかかないでいることは家族なんかよりもずっと大切なこと。
しかし、その『社会に沿った考え方』は、同時に自分の存在への否定にもつながってしまう。
自分を肯定できないなら社会の基準だけで自分を測らねばならず、そして社会の基準なんてものは往々にして生身の個人を肯定するようにはできていない。
『恥ずかしい人間』は社会にいてはいけない。しかし自分は『恥』の塊である…。
そんな主人公の姿は終盤、マイケル・ファスべンダーのド根性エクストリーム役者魂によって痛々しく描かれる。

人にゃ勧めないが自分は面白かった。
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