はやし2号

バッファロー’66のはやし2号のレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.8
監督、脚本、音楽、主演ヴィンセント・ギャロ。ビリーは、不器用で臆病で自己中で虚言的で凶暴で繊細で純粋で優しい。心は少年のまま。
親の愛情を受けずに、愛に枯渇していた。恋人もいなく、愛を知らなかった。
一方クリスティーナリッチ演じるレイラについては何も語られない。気立ての良いお人好し。タップダンスは、彼女という人物像が垣間見える唯一のシーン。
歌やダンス、独特な雰囲気に包まれ、不思議な魅力が詰まっている。
父や彼女にも語るべき長い人生があるのだ。
だが、この作品はあくまでビリーの長い1日に焦点を当てている。
ストリップクラブのシーンは当時としては斬新な撮り方でのめり込むことが出来た。
2人のもどかしくも不思議な距離感に思わず微笑んでしまう。
しかし、明らかに共依存のような関係。
知らずのうちに互いが互いを過度に必要としている。
レストランでの「生きられない」の一言に、ビリーのこれまでの人生が集約されている気がした。死にたいのではない、生きられないのだ。
苦悩、苦痛、後悔、絶望。
だからこそ、ラストの心変わりが、ささやかな幸せが、より輝いてみえた。
なにも知らない目の前の人を愛する。
なんて恐ろしくて、なんて素晴らしいのだろう。
はやし2号

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