かつきよ

千年女優のかつきよのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
3.6
大人向けのアニメ映画。
現実世界と幻想世界、事実と映画の世界、混じり合う感じは今敏さんさすがだなぁと言う演出力。斬新だし、でもすごくいい塩梅に混じり合ってて、難解とか混乱とか、そうはならなかったです。

ゴッドファーザーズ的な現実を主軸に置いた話ではありましたが、演出的には多分に今敏みを感じられて、大変引き込まれました。やはりこの独特の作風はクセになるものがある。

内容に関してはかなりまっすぐと言うか、キャッチコピーにもある通り、狂気にもなりそうな純愛の話。それを軸に、架空の大女優の人生を追った映像体験の提供。言ってしまえば私の苦手なドキュメンタリー系です。ドキュメンタリーアニメ映画。ストーリーの前提背景には社会派の雰囲気も出してきますし、展開・オチ含めて、エンタメ的な派手さは冷静に考えるとあまり無いかなと思うのですが、それでも演出のおかげでかなり独特のエンターテイメント性が突出して醸し出されていて、ぐいっと引き込まれる楽しさがありました。新しいタイプのエンタメだと思います。

今敏作品はいいおじさんが出るなぁとは思っていましたが、今回のげんやさんはある意味主役。
藤原さんの恋心とげんやさんの恋心、どちらも激しくて、かなりまっすぐである意味異常。でも、全然質の違うものだなぁと見ていて感じました。その対比も良かったし
げんやさん本当にかわいらしい。。。
くっつけー!という明確な感じではなくて、、、でも、見ていてすごく応援してしまいました。応援、、、でいいのかな。どっちかというと、見届けたい感じ?この絶妙さ、言葉にするの難しい。

最初の映画の演出が最後に繋がる構成は、一本の映画として完璧だなと感じました。
最後のセリフ、なるほどなと、、、
言葉では表現しにくい絶妙なところを、これでもか!と載せて映像表現、ストーリーに仕立て上げてくれている感じ。今敏映画って本当に感想書きづらい

女優として生きた一人の女性の人生を描いた作品として、これは一つの到達点だと思いました。
もちろん他にいろんな作品があると思いますが、このテイストで描く、このテーマで描くとしたら、これ以上のものはもう世の中に生まれないだろうなと
千年女優って、ドキュメンタリ風の実写映画として撮影しても様になるくらい、ある意味生々しい「人間」の話だと思います。むしろ、ストーリーだけなら写実映画の方が良かったと言われそうな作品だと思います。アニメでやる意味は?と言われそう。しかし、アニメで表現するからこそ、むしろ実写よりも生々しく、アニメでしかできない表現、映像体験、演出をギガ盛りパフェの如くあしらった様な作品。ここまでやられたら、誰一人「アニメでやる意味あった?」と言えない。むしろアニメじゃなきゃできなかった。そう屈服せざるを得ない感じがしました。
これがジャパンのアニメだよって世界に誇れる

そういう名作だと思います。
かつきよ

かつきよ