くわまんG

千年女優のくわまんGのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.5
女は死ぬまで女。しわが増えようが体重が増えようが、女性はいつもいつまでも「女」。それは、到達点は全く違えど、男がじじいになっても夢や幻を追うのと、少し似ているのかもしれません。

あらすじ:
女優、藤原千代子。戦後から昭和の銀幕を席巻した大スターである。ある事件を機に姿を消し、ほぼ一切の社交を断って、今はいずこかで隠居暮らしをしているという。
都会の小さなスタジオで番組製作会社を営む立花は、ひょんなことから藤原千代子に関連する“モノ”を手に入れた。これを直接渡したい旨伝え、長年の大ファンでもある彼女に、ダメ元で取材をオファーした。すると、なんと快諾され、自宅へ招かれることに。
数十年ぶりに姿を現した藤原千代子。果たして彼女は、藤原千代子なのか。面食らう立花をよそに、件の物を懐かしそうに受けとり、ゆっくりと話を始めたその女は、紛れもなく藤原千代子であった……。

見所:
恋に恋をするという無限の所業
常に美しくありたいという狂気
秀逸な狂言回し
尾を引く観応え

とにかく千代子が放つ感情の火力が、蒸せかえるほどに凄まじい。宮崎駿監督の『風立ちぬ』が男の物語ならば、本作は女の物語。男より遥かに現実的な女性が、数値化できるものを無視して足を踏み入れる深淵があるとすれば、それは時として善悪をわきまえないのかもしれません。

対して狂言回しの立花は男であり、突出した生産性も受容器も持ち合わせない人。つまり立ち位置は鑑賞者サイド。部下との掛け合いも邪魔にならない程度で、絶妙にほぐしてくれます。

女性はこれを観てどう感じるんだろう。特濃の傑作。