こたつむり

千年女優のこたつむりのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
2.6
★ 時を超えて、嫋やかに紅一輪

虚構なのか、現実なのか。
線上をゆらりゆらりと揺蕩いながら、一人の女性の“想い”を描いた作品。初見ながらに既視感が強い作品でした。

何しろ、筒井康隆先生の作風に似ているのです。いわゆるひとつの“メタフィクション”というやつですな。

確かに今監督は本作以降に『パプリカ』を作り上げていますからね。それを考えると、筒井康隆先生の愛読者だったのは確実(ウィキペディアで補完しましたが『パプリカ』の代わりに作ったのが本作だとか…なるほど)。

ただ、現実と虚構の境界線に観客を引き摺り込むためには、共感しやすい主人公であることが必要。はたして《藤原千代子》に心を寄せることが出来るのか…というと、正直なところ、かなり微妙なのです。

特に“想い人”の描き方があまりにもあっさりとしているので、何故に“彼女が想い続けるのか”がラスト直前まで解りませんでした。やっぱり、情念はドロドロでグチャグチャだからこそ情念。カジュアルでサラサラな思慕は歴史の激流に飲み込まれるのがオチだと思います。

だから、本作は物語を楽しむのではなく。
美麗な映像を楽しむ作品…なのでしょうね。
“千年”と称するように、武家が支配する時代からロケットに乗る未来まで、様々な映画を模した場面を堪能すれば良いのでしょう。昔の邦画が好きな人ならば沁みる部分もあると推測します。

まあ、そんなわけで。
前評判の高さに期待し過ぎたのか…個人的には微妙でしたが、本作が公開されたのは2002年。それを考えると、精緻な映像は驚嘆に値しますし、監督の功績がアニメの隆盛を招いた…というのは、過言ではないと思いました。
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