突如姿を消した女優・藤原千代子のドキュメンタリーを撮るために彼女の取材を行うことになった映像製作会社の2人が、インタビューを進めるうちに、彼女の失踪の裏に秘められた恋の物語が明かされていくファンタジードラマ。
追い続けることが生きる力。
『パプリカ』『東京ゴッドファーザーズ』の今敏監督が手掛けた日本のアニメーション映画。文化庁メディア芸術祭で『千と千尋の神隠し』と共に大賞を受賞し、ドリームワークスによって、世界配給された。
今敏監督のイメージはサスペンスとかミステリーが強いのですが、本作では純愛モノのラブストーリーを描いていて、ちょっと驚き。
毛色の違う中でも監督の持ち味の“現実と虚構の入り乱れた世界”が描かれていて監督の作風が好きな僕はこの世界感を十分楽しめました。
本作では女優・藤原千代子が語る「現実」の過去と、彼女が演じた「作品」の数々がシンクロするかのように物語が進むのですが、制作会社の2人(特に関西弁のカメラマン)のメタなポジションのおかげで、今まで観た監督の作品の中では、境目の区別がつきやすかった。
また、平沢進の音楽との相性が今作でも発揮されていて、時代劇とテクノサウンドの融合が印象的。そこでギャップを感じた音楽が終盤の壮大なファンタジーの世界で追いつく感じが鳥肌モノでした。
こんな感動の仕方で涙出たのは初めてかもしれない。
“お客も女優も同じだ
適当に嘘を織り交ぜてノせてやるんだ”
“私行きます どこまでも会いに”
彼女が彼を追い続けた終着点があの静寂の彼方の世界というのが素晴らしかった。
そしてラストの彼女のあのセリフで一気に物語の見え方が変わるのだけど、生きる原動力、生への執着心とはつまり、そういうことなんだろうと共感。
それを狂気や呪いと言うのならば、恋愛感情なんて全てがイカれた感情です。
自分を生かすために
自分を肯定してあげるために
自分のために誰かを愛し続けるなら
それは最高に幸せな人生だと僕は信じたい。
