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千年女優のアツのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.2
【虚構と自己愛の肯定】
そんな1本。

今敏監督を巡る旅
〜二駅目〜
『千年女優』です。

まずタイトルがいいですね。

『千年女優(せんねんじょゆう)』

最近はタイトルで作品世界を解説しちゃうものが多いですよね。
例)○○ちゃんは○○
みたいなの。

「あー、○○ちゃんは○○で○○過ぎて○○しちゃう話なんだな」と
なんとなく
想像がつきやすいですね。

それが悪いとは思いませんが
何かこう…含みを持たせるというか
想像の余白のようなもの
そういうのが足りないですね。

それと比較して
『千・年・女・優』
こちらは漢字四文字!!
シンプルー😆

でもって、数字のセレクトもいいね。
百年女優…いまいち。
万年女優…駄目だ。
千年女優…これだ!ってなりますね。

お!?何?どんな話?って
興味がむくむく湧いて来ますね。
タイトルだけで色んな想像が
膨らみますね。

ちなみに
僕は観る前は
不老不死の薬で生き続ける人が
千年もの間、女優をする話だと
思ってました😅

しかも今作が凄いのは❗ですよ。

観た後に…
『なるほど!!
タイトル…そういう意味か❗😳❗』
ってなるんですよ。

もうここのね。
スタート地点からの仕掛けが憎い。
もうね。勝ちです。ここで。
今敏監督の。

❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁
〜あらすじ〜

大女優として有名だったにも関わらず
30年前に銀幕からこつ然と姿を消した
藤原千代子

彼女の大ファンである映像会社社長の
立花源也とその部下、井田が
「あの人は今」的な
ドキュメンタリー番組の
インタビューという形で
藤原千代子のもとを
訪問するところから物語は始まります。

立花は、貴方に渡すものがあります…と
藤原千代子に
古びた小さな鍵を渡します。

その鍵は藤原千代子が
昭和20年台の少女期に出逢った
『鍵の君』と彼女が呼ぶ
想い人から
渡された思い出の鍵でした。

藤原千代子は鍵が自分のもとに
戻って来たことを喜び、
『鍵の君』を追い求めて
女優になったことや
混乱の戦後を生き抜いてきたことを
ぽつりぽつりと話し出します。

藤原千代子は鍵の君と再会出来たのか
何故こつ然と銀幕から姿を消したのか
鍵は何の鍵なのか
何故その鍵を立花が持っていたのか
愛とは 女優とは…
千年の時をかける愛の物語が幕をあける

【その愛は狂気にも似ている】

❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁

まあこういったお話です🙂

で、今作の何が凄いのか ですが

❝アツのアニメ視点的オススメポイント②❝

藤原千代子のインタビューから
彼女の過去の回想に入っていくのですが
その中で彼女が出演した
過去の映画の場面と彼女の思い出が
交錯し、劇中劇の態を擁していきます。

インタビュアーの
立花と井田もいつしか劇中劇に引き込まれ
ある時はモブで
またある時は出演者になりながら
藤原千代子の過去を一緒に体感していきます。

1番のポイントは
ここの表現です。
次々と切り替わる世界と映像。
畳み掛けるように映像が切り替わります。
圧巻です。

もともとの今敏監督のアイデアは
『かつて大女優と謳われた老女が自分の一代記を語っているはずが、記憶は錯綜し、昔演じた様々な役柄が混じりはじめ、波瀾万丈の物語となっていく』という
比較的シンプル?(シンプル…かなぁ😅)
なものだったそうです。

この脳内のイメージを
今作のような映像に仕上げる
その能力が素晴らしすぎるのです。

この辺りが奇才等と呼ばれる由縁ですね。

そして物語の最後。
藤原千代子の一言が衝撃的です。

『どっちでもいいのかもしれない…。
だって…私……
✾✾✾な私が✾✾✾✾……』

「え!?それってどういう事??」
という観客側に観終わったあと
あーだこーだ語り合いたい余韻を残して…

平沢進の名曲
『ロタティオン』が
バーン!と流れてエンディングです…。
耳に残るんですよねー……。

ちなみにこの『ロタティオン』は
今敏さんの出棺の際にも流れたとの事。

今敏さんは平沢進さんの
大ファンだったそうです。

このコンビの相乗効果が大爆発するのは『パプリカ』なのですがそれはまた今度…

ラストの台詞で色々意見が
分かれるみたいなのですが、
僕は今敏監督の創作に対する
虚構と自己愛の強い肯定だと
感じました。

こんな映画、
やっぱり彼にしかつくれない。

さあ、
三駅目は…
『東京ゴッドファーザーズ』です🙂
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