ゆずこ

コクリコ坂からのゆずこのレビュー・感想・評価

コクリコ坂から(2011年製作の映画)
4.0
父を朝鮮戦争で亡くし、母勉強のために渡米しているため祖母の下宿屋で暮らす主人公の海ちゃんが真面目で良い子すぎて泣ける。弟妹が遊んだりくつろいだりしているなか寄り道せずに帰宅してご飯をつくり、早起きしては下宿人たちの世話を焼き。頼れる人がいないから、自分がしっかりしなきゃと思ってるんだろうなあ。もっと自分のことを優先していいんだよ。エスケープしてまえ!!と苦しくなる。
そんななかでの風間さんとの淡い恋模様にときめかざるを得ないのに、ある時から翳る風間さんの表情。は〜〜この時の海ちゃんの心労ったら!もう!海ちゃんが泣いてるのを見ると私まで泣きそうになってしまう。
この風間さん、運動神経がよく、しっかりした考えを持ち、美丈夫で、人気者。くわえて声帯が岡田准一。
だが、私が好きなのは水沼さんである。水沼さんはカリスマ的リーダーシップがあり、一見真面目眼鏡に見えるのに、テストの山張りをしたり、初対面の女の子をさらりと口説いたり、馬鹿騒ぎの中心にいたり、大仰な言葉で友人の恋路を応援したり、お茶目なところがあるのが素敵だ。周りをよく見てじっくり考える彼だからこそ、二人に何かあったのを察して叔父のところに寄るからと一人駅に向かったに違いない。気遣いができる良い奴だ。水沼さんの人生上の〜は名台詞。あんた理事長によくそれ言ったな。

全体で言うと、カルチェラタンの、あらゆるものと埃と浪漫がぎゅうぎゅうに詰まった部室の雰囲気が好き。古き良き青春。
そして流れるジャズと上を向いて歩こうがたまらない。
無視という程でもないけれど避けられてるのかもしれないと気付いた時のもやもや感とか、電車内で気まずくてずっと車窓の流れる景色を見つめてる時間とか、海ちゃんの揺れる心情描写とか、リアルで良い。
終わり方は拍子抜けだけど、それ以外はとても好きな映画。
ゆずこ

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