わたふぁ

ニキフォル 知られざる天才画家の肖像のわたふぁのレビュー・感想・評価

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ポーランドに実在した素朴派の画家・ニキフォルの晩年を綴った物語。

街ゆく観光客向けに、物乞いのように絵を売り歩き、日銭を稼いで路上生活をしていたニキフォルだが。冬を前にして、とある建物に潜り込んだ。そして誰が何と言おうと彼は居座った。
一方、居座られた側のマリアンという男性は、美術関係の公的職務に就いていて、自身も画家であった。突然のニキフォルの行動に困惑し、最初こそ拒絶するも、華奢な老人を外に投げ捨てられるわけもなく、絵の具や食事の用意をするようになる...。

マリアンが、家族のことや世間体を気にせず、自らの人生を投げ打ってニキフォルのお世話をしたのは、彼の絵を見て、同じ画家として“放り投げてしまってはいけない宝物だ”と思ったからだろう。

ニキフォルは生涯に4万点もの作品を残している。
文字の読み書きができず、言葉は不自由だったそうですが、それは素敵な絵をたくさん描いてもらうために施した、神様の仕業ではないかと思えてくる。
世の中に本当に必要な情報なんてほとんど無いのだから、それらが排除されたニキフォルの絵描き人生は、描けば描くほどシンプルに研ぎ澄まされていったことだろう。

筆と紙と絵の具と小銭。
持ち物はそれだけの、豊かな人生に憧れる。