イチロヲ

ネクロマンティック1[完全版]のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.5
死体清掃局に従事するネクロフィリア(死体愛好家)の青年が、失業と失恋の二重の痛手を負ったことにより、精神に破綻を来していく。とてつもなく不健康なエログロスプラッターのように見せかけている、旧西ドイツ製の青春ギャグ映画。

「ネクロフィリアという性的嗜好を分かち合えていた恋人」が、主人公のもとから去っていく。普通の男ならば「女は他にもいるから」という理由で立ち直ることができるだろうが、アブノーマルを共有できていた女を失った衝撃を慮ると、そう簡単にはいかない。

本作では、そんな屈折した失恋体験を「岩井俊二+トロマ映画」的な、珍妙な世界観の中で描写している。とりわけ、生首を使ってキャッチボールするシーンと、独りきりになった主人公が「うっひょおおー!」と咆哮しながら野原を飛び回るシーンが記憶に残る。

本作のような、性倒錯者のエモーションが伝わってくる映画は、まさに筆者の大好物。インダストリアル・サウンドの使い方も絶妙であり、心に染み入る映画体験を味わうことができる。
イチロヲ

イチロヲ