KnightsofOdessa

1953年の冷たい夏のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

1953年の冷たい夏(1987年製作の映画)
2.5
[犯罪者に大量恩赦→徒党を組んで襲ってきた!] 50点

1953年夏、スターリンが死に、その右腕だった第一副首相ラヴレンチー・ベリヤは流刑されていた人々に幅広い恩赦を出す。その数は半数以上に及んだらしい。すると、政治犯以外の普通の犯罪者たちまで解放することとなったのだ(アホか)。事実は小説よりも奇なりとは正にこの事であるが、実際の出来事であるのが正にソ連っぽい。この大量恩赦は権力闘争のためらしいが、あっさりフルシチョフに破れて処刑されるあたりもソ連っぽい。本作品はペレストロイカによって解禁された体制批判ブロックバスター系ボルシチ・ウエスタンである。

舞台は人口50人にも満たないロシアの寒村。主人公のルズカは政治犯としてこの村に流刑の目に遭っていた。全く働かずに水面ばかり眺めている彼に対して、村人は軽蔑の目を向けている。労働が最も重大な義務であるソビエトにおいて全く働かないのに、それなりの世話をせにゃならんからだ。唯一彼に付きまとうのは都会が気になっている少女シューラである。都会(というかモスクワ)から来たルズカに都会のことをしつこく聴いているのだ。シューラの母親はそれが気に入らない。

そんな村に大量恩赦によって解放された犯罪者が徒党を組んで襲撃してきた。彼らは何も怖くないので警察をあっさり殺し、村人は全員を監禁する。ルズカともう一人の流刑者ニコライは"人民の敵め"と言われて殴られるが監禁はされずに放置される。隠れていたシューラが発見され、レイプされかけていたのでルズカは立ち上がる。彼は二次大戦期に部隊長だったのだ(なんやその設定)。何でもない奴が実はすごい奴だったというウエスタンみたいな展開。その後一人ずつ丁寧に殺していく。最後の一人によってシューラが雑に殺される雑なニューシネマ的ラスト。犬死 of the year だけど、へぇって感じで、別に感情は沸かない。

画面の色遣いから「炎628」を思い出すが、演技演出画作り展開胸糞悪さ全てにおいて負けている。内容としても体制批判とブロックバスター系ウエスタンを混ぜた結果、なにが言いたいかよく分からんものが出来上がってしまった。ウエスタンが先に生まれたか体制批判が先に生まれたか、いずれにせよ水と油であることに変わりない。文字化して指摘できるほど悪い点があるわけじゃないんだが、変な違和感にモヤッとしている。

てかトロツキストなのに二次大戦中に部隊長やってるという設定から矛盾してる気がするが、それはどうなんすか…
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa