horahuki

ゴースト・ストーリーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ゴースト・ストーリー(1981年製作の映画)
4.1
想いを閉じ込める雪

怖い話を語り合って「こりゃ数年ぶりの傑作だ!」とか言って子供みたいにはしゃぐヨボヨボジジイ倶楽部の面々。そんなジジイたちが悪夢にうなされてるとこをアップで何度も何度も見せつけてくる誰得映像の連続にうんざりさせられつつも、ジジイに対して「じゃあ怖い話すんのやめたらええやん!」というド正論をブチかます奥様に拍手したくなる心霊ホラー。

古き良き心霊譚を現代(80年代?)に蘇らせるにあたって、考えられた工夫が圧倒的な説得力を生み出しているし、古さと新しさがミックスされた雰囲気が凄く良くて最後まで楽しく見られた。

近代的な街並みの中にある古い家を対比させることで、どんどん世代が変わっていき隅に隅に追いやられ朽ち果てていったとしても消えることなく残り続ける怨みの根深さを舞台をもって表現し、更には同じ「古さ」の中でも古風な屋敷と廃墟のような建物を対比させることで、道半ばで消え去った無念を強調し、その上に成り立つ偽りの綺麗さが纏う気持ち悪さが、物語の進行に合わせて引き立ってくる。

ジジイたちは心の中に秘めた過去をずっと引き摺っているわけで、そのために怖い話に惹かれ、古風さを全身に身に纏っている。その彼らの偽りの綺麗さは幽霊視点で見た怨みの対象としての意味合いとジジイたちから見た過去への罪悪感の両輪を備え、幽霊による復讐は真っ当だという感覚を植え付けつつも、それ以上に罪悪感とともに何十年もの日々を過ごしてきたジジイたちが殺されていくことへの辛さが迫ってきて、どちらとは言えないドラマの深みがあった。

誰かの悲しみの上に成り立っている平穏というのは過去も現在も同じで、過去に打ち捨てられた者と現代に打ち捨てられた者との共鳴というのも、現代版心霊譚としての本作のテーマに直結するものだし、平穏の背後にあるものを見過ごすことのないように警鐘を鳴らすあたり凄く誠実な作りだと思った。

死へと誘う幽霊の演出も光ってた。降り続く雪により視界が不明瞭な中で、向こう側から自分を呼ぶ「誰か」が薄らと浮かび上がる。その「誰か」へと歩いていく道のりは失った大事な人を求める気持ちだけでなく、心の奥底に燻る罪悪感に対する赦しという決着をつけたい無意識下での願望をも体現していたのだろうし、だからこそ双方ともを挫く結末というのは、本当に悲しい…。

原作はそれなりに長いようで、そのせいかストーリーを語ることに徹しすぎた箇所が中盤以降多く出てきて、少し興味が遠のくんだけど、最終的にはそこも含めて面白かったな〜って素直に思える作品だった。

そして何より、後ろから「ワッ!」って脅かされてビックリしてそのまま派手な投身自殺をするっていう毎度毎度お決まりな幽霊さんの殺害方法に大笑いすること間違いなし!
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