イルーナ

チャーリーとチョコレート工場のイルーナのレビュー・感想・評価

3.8
ティム・バートンとジョニー・デップの黄金コンビの代表作の一つ。
数年前まで実際にウォンカのチョコが販売されていたので、映画を観たことが無くても商品を見たことのある人もいるかも。
(2018年で製造終了だったので、改めてタイアップ商品と思えない息の長さに驚かされる。映画公開から10年以上も売られていた!さらに調べたらアメリカでは1998年頃から売られていたらしい)
実は本作の前にオリジナル版の『夢のチョコレート工場』を観ていました。
あちらは予備知識ゼロで観たら「何じゃこりゃ?」となったのですが、こちらも初見の人だと「何じゃこりゃ?」になりそう。

オリジナル版では子供っぽさを残しつつも父性あるキャラクターとして描かれたウォンカが、本作では……
天才ゆえに子供の心のまま大人になった結果、デップのキャラもあって大変エキセントリックなキャラクターに。
もうハナから怪しさしかない。
例えばチョコの川のシーンで「ここにあるものは何でも食べられるよ~、僕もね~。共食いはあまり一般的じゃないけど」という具合に。
しかも工場見学に招いた割には一貫してよそよそしい態度だし。
というわけで本作はウォンカが家族というトラウマから解放される話であり、タイトルのチャーリー自身は最初から完成された存在として描かれます。
この件は原作やオリジナル版にはなかったエピソードで、前作『ビッグ・フィッシュ』に続き、「父親との和解」がテーマになっています。
それだけ、人生の転換点になった出来事だったんですね……
父は壁に息子の活躍を報じる新聞記事の切り抜きを飾っており、息子も歯のケアを怠らなかった。
たとえ絶縁状態になっていても、心のどこかでは互いを思っていた……

一番の見どころの工場内部。
ナッツ選別室のリスはCGでなく実際に訓練したものだそうで、あんなにたくさんの数を……と考えただけで気が遠くなりそう。
テレビルームでは色々パロディを見せていましたが、ウンパルンパのポーズもあれ『プラン9・フロム・アウタースペース』が元ネタですよね?バートンらしいといえばらしい。
一見遊園地のような楽しさですが、実はトラップ満載……というかチャーリー以外の子供が欲かいた結果ヒドい目に遭うのがパターン。
最初の人形のセレモニーの時点でグロいことになってて「あっ、これはヤバい」となります。
原作が「悪い子はこうなるぞ!」という教訓の作品なので、チャーリー以外はそれぞれ「チョコの川に転落、吸い上げられる」「全身青くなった挙句ガムみたいに膨らまされる」「ダストシュートにボッシュート」「ミクロ化」という目に。
実際の被害は小さかったとはいえオーガスタスやベルーカは運が悪けりゃ死んでたし、ヴァイオレットやマイクは当分、下手したら一生治らなさそう。
それでも子供たちが反省している様子が一切ないのは、「(チャーリー以外の)子供なんて結局ロクでもない!」という開き直り感アリアリです。
そして本作を代表するキャラクター、ウンパルンパ。
子供たちがヒドい目に遭うたび、彼らをおちょくるナンバーを披露してきます。
こちらはバラエティ豊かで、オリジナル版より大きな進化を見せている。
しかし給料がカカオ豆って……これブラック労働じゃん!

という具合に、バートン色が大変濃い作品です。子供のころ観てトラウマになった人も結構いるのではないでしょうか?
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