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ハード・チェックのTTのレビュー・感想・評価

ハード・チェック(1994年製作の映画)
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名匠ウィリアム・フリードキン監督で、ニック・ノルティ主演、シャキール・オニールやアンファニー・ハーダウェイなど名だたるNBAスターが出演しているバスケット映画にも関わらず、日本ではビデオスルー扱い。しかし、これがまた滅法面白かった。

原題のBlue Chipsは株式用語で優良株という意味。ストーリーは、N・ノルティ演じる大学のバスケット・チーム“ドルフィンズ”のコーチが、チームの連敗を打破するため、有能な新人選手を買収工作で獲得したことから、段々良心の呵責に苦しむバスケ界内幕モノ。

脚本はロン・シェルトン。脚本家になる前は、バスケと野球の奨学金を得て大学に入り、卒業後は6年間マイナーリーグで野球選手だったという異色の経歴の持ち主。その野球選手だった頃の経験を基にした『さよならゲーム』は、日本ではあまり取り上げられないアメリカのマイナーリーグの世界を描いた秀作だったが、本作の脚本もあれに引けを取らないくらい良くできていた。

試合前のミーティングでN・ノルティが選手たちを叱咤激励するアヴァンタイトルや、N・ノルティが宗教を利用してまでスカウト選手の家族に取り入ろうとするディテールは、そういう現場を経験した人だからこそのリアリティがあった。

N・ノルティがスカウトする学生の一人として出演しているシャキール・オニールの演技が完全に素なのだが、彼のダンク・シュート(シャック・アタック)はテレビ画面からでも迫力が伝わってくる。まぁ、NBA1年目からダンクシュートでバスケのゴール2度破壊してるような人だからね。

『エクソシスト』や『L.A.大捜査線』のような、フリードキンが俳優たちを追い込むが故に生まれる狂気がこの映画にはないが、 職人的仕事に徹したのがプラスに転じたのか、良質な娯楽作になっていた。それにしても、フリードキンはもっと評価されてもいいんじゃないか。近年は『Killer Joe(キラー・スナイパー)』みたいな名作作ってるわけなんだし。
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