男はつらいよ全48作を頭からずーっと観ていくと戦後昭和の再興と光芒と、その光が生んだ影と歪みまでが綿々と記録されてて、ウルウル泣きながらも驚いたもんだ。でその光と影を一番強いコントラストで見せられる感じのこの作品は寅さんシリーズ全部合わせたくらいに好き(言い過ぎ)。
「なんでわしら大きなものに勝てんのかいの？」と海を去り陸に上がった男達が、その後どんな風にバブルを膨らませ弾けさせしてぐっちゃぐちゃの現在に至り、虚無を抱えつつよもやの戦前回帰的情勢…てのを知りながら観てるわけで、もう瀬戸内の眩しい波光と真っ黒な影が眼に沁みて沁みて…切なすぎて刹那すぎて安穏と泣くこともできまへんわ。けど脇役の寅さんと御前様の姿はパッと見ただけ涙にじみますわ。
