まさなつ

ブラディ・サンデーのまさなつのレビュー・感想・評価

ブラディ・サンデー(2002年製作の映画)
4.0
ボーンシリーズで有名になったポール・グリーングラス監督の出世作。傑作です。

この映画がベルリン映画祭で金熊賞をとって注目され、ボーンシリーズ2作目に抜擢されたのだと思われます。日本未公開。もったいない!ちなみにこの年に同時受賞したのが「千と千尋の神隠し」です。

この映画は、1972年に北アイルランドのデリーで、非武装の市民の公民権デモの最中に英国軍が発砲して14人が死亡し、14名が負傷した事件=「血の日曜日事件」を描いています。
デモ側と英国軍側を、デモのある1日、小刻みに交互に描かれます。とにかく緊迫感が半端ない。この監督らしい手持ちカメラや編集で臨場感たっぷりです。優れた映画は、時にドキュメンタリー以上にリアルに迫ってきますが、この映画がまさにそれです。「アルジェの戦い」を彷彿させます。

この映画を観てると、悲劇は必然的に起こったとしか思えないです。
あくまで平和的なデモを企画する議員、英国への反抗心が強い若者グループ、IRA、地元警察、英国軍など思惑の異なる人々が入り乱れ、アイルランドvs英国、カトリックvsプロテスタント、強硬派vs穏健派など複雑にからみ、一触即発状態で、観ていてヒャヒャします。
案の定、小競り合いから始まって、、、。

犠牲になった内、5人は背後から射撃されたと言われ、事件のあった地域の名を取って「ボグサイドの虐殺」とも呼ばれているそうです。

武力による攻撃は憎しみを生み、憎しみからはさらなる憎しみを増幅させるだけ。この悲劇の後、IRAに入会する若者が増え、それは英国への大きなしっぺ返しに繋がります。ちなみに、グリーングラスは英国人。自国の負の歴史をきっちり描く気概が素晴らしい。

エンドロールが終わっても、U2の「Sunday,Bloody Sunday」という曲が流れますが、その歌詞がまさにこの映画とリンクしていて強い余韻が残ります。
まさなつ

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