子持ちのカイロレン

クリス・ファーレイはトミーボーイの子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

4.5
33歳の若さでこの世を去った伝説的コメディアン、クリス・ファーレイの主演デビュー作。とにかく見てくれ、顔から床に倒れ、ガラスにぶつかり、板で殴られ、それでも健気に犬のような顔で観客に向かって走ってくるこの姿を。考えているのは笑いのことだけ。撮影中は毎日30杯近くコーヒーを飲んで常に覚醒、家では酒とドラッグで寿命を縮め、憧れていたジョン・ベルーシと同じ歳で死んでしまった。そんな彼が唯一満足できた映画はこれだけだったのではないだろうか。
 本作で彼が演じるのは、大学を7年かけて卒業し、父親の会社に就職する為に地元に帰ってきたバカ息子。しかし父親が急死、急遽会社は存続の危機に。会社と従業員を守る為にアシスタントと大陸横断、自社製品を売る旅に出る。
 ハイテンションなファーレイとその横で冷たくツッコミを入れるデヴィッド・スペードの珍道中。相反する二人が心を通わせるきっかけはカーラジオから流れるカーペンターズの「スーパースター」。号泣しながら歌う二人…バカだ。しかし真の友情はバカになってからようやく始まるものである。
 監督はコメディ映画の職人、ピーター・シーガル。二人の個性を活かしつつ、まるでアダム・サンドラー映画のようなクラシカルないい話に見事に着地させている。
 そういえば心優しいがキレると何するか分からないファーレイのキャラクターは、SNL時代の仲間、アダム・サンドラーと似ていなくもない。本作では演技の才能も見せており、もし生きていたら、サンドラー同様映画界になくてはならないない存在になっていたのではないだろうか。ちなみにサンドラーは今もファーレイを慕い、ツアーでは「クリス・ファーレイに捧げる歌」を歌っている。