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恐怖の火あぶりのhorahukiのレビュー・感想・評価

恐怖の火あぶり(1979年製作の映画)
3.9
あなたは自由よ!

ママに虐待されて育ったドニーくんは、ママが死んだ途端に「自由だー!」と大喜び。早速あの手この手で女を連れ込んで好き放題に焼きまくるサイコ系ホラー。

レンタル開始が有り難い😆
めちゃ期待してたんだけど、期待以上に面白いし、映像もめちゃオシャレで気合入ってるとこが多くて好みな作品でした♫

同僚見殺しにする冒頭から狂ってるドニーくんのヤバさがわかるし、死んだママ見つけた直後に「大音量で音楽かけていいの?」とか言って早速自分の部屋に行きレコードガンガンに鳴らしながらベッドではしゃぎまくるドニーさんのイカレ方半端ないっすわ。

壁にかかる十字架を印象的に捉えた映像で神に背を向ける(自身の心に目を向けられない)ドニーくんの精神状態が伝わってくる。そこから、虐待と過剰な躾によって形成された未熟さが母親という抑圧であり道しるべでもあったものを失ったからこその解放と転落って感じでどんどん狂気を帯びてくるんだけど、一度背を向けたモノと向き合おうと抗うドニーくんの内面の葛藤が次第に大きくなっていき、母の亡霊(自身の過去)に打ち勝ち受け止めることで前を向こうと足掻く姿にめちゃ辛くなってくる。

再生物語なんて数多くあるわけだけど、人が再生することがいかに難しいことなのかということ。どれだけ努力してみても亡霊は決して離れることなくずっと自分の心の中で引き摺り込もうと待ち構えている。

冒頭、家に帰ってきたドニーくんが階段を見上げる際の切り取り方がめちゃキマってて、ママという果てしない壁を見上げるような嫌な感覚にさせられるし、合わさるメトロノームのような音による焦燥感が彼の脅迫性な精神状態を観客に同調させるのもいい感じ。

挙動不審なドニーと歩き回るキャシーの切り替えの後に豪華さの中にある剥がれた壁紙が違和感を募らせるし、言葉を発しながらも顔が一切映らないドニーの二階へ向かう動作を捉える映像がカッコよくて、ホラー的美しさを感じさせる良い演出だと思いました。影による『吸血鬼ノスフェラトゥ』へのオマージュももちろんサイコー!

そして3人の黒焦げさんが鎮座する部屋の異様さは最高にカッコいいんだけど最高に気持ち悪くて、異常性に絡め取られていく彼の心にとっての信仰を表す祭壇のような役割を果たしていくのが病的な度合いが行き過ぎててめちゃ好き。というかあの火だるまのとこどうなってんの?合成?凄いね。

最終的には普遍的な親子の物語として、至る所に当たり前のように転がっている火種を被害者の目線という最も強烈な非難という形で観客に向けてくる。チープな作品だと思うけど、私的にはめちゃ面白かったです♫
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