梅田

湖のランスロの梅田のレビュー・感想・評価

湖のランスロ(1974年製作の映画)
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いつものブレッソン的な映画ではあるけど、舞台が中世で甲冑の騎士たちが主要な登場人物。冒頭のシーンでいきなり首が吹っ飛ぶ。蛇口をひねったように流れる鮮血がショッキング。
作業のように繰り返される騎馬戦のシーンでは、兜が顔を完全に隠していて誰が誰なのかさっぱりわからないのもあって非常に単調なはずなのに、ブレッソン的構図で切り取られた騎馬の動きはどれも半端なくかっこよくて、こんな馬の撮り方があるのかと痺れた。

後から『彼自身によるロベール・ブレッソン』掲載のインタビューを読んでめちゃくちゃ膝を打ったので、以下一部抜粋。今まで何となくブレッソンの映画を観てきたけど改めて文章を読んでだいぶ視界が開けた。
「馬もまた音楽、リズムです。馬は私に、生き生きとした自発的な運動と、私が愛するものすべてを与えてくれます。(中略)映像に関しては断片化です。つまり物事を切り離された諸断片によって見せることです。これは、われわれが物事を最もリアリストな仕方で見るときと似ています。胸、引き締まった後半身、首などの諸断片こそが、疾駆する馬のもたらす躍動感を表現するのです。馬が止まるときは、地面に蹄が打ち付けられるところを見せます。断片化がなければ表象に陥ってしまいます(騎士を乗せた馬の全身、風景など)。しばしば繰り返してきたように、シネマトグラフとは映像を用いた何も表象しない芸術なのです。」
「ここで重要だったのは、感覚(サンサシオン)を伝達することであり、サーカスや縁日で見られるように騎馬試合の全体を最初から最初まで一続きに見せることではありませんでした。ここでもやはりリズムです。リズムは絶大な力を持っています。リズムの中に嵌まり込んでいるとき、事物は強烈な印象を与え、記憶の中に刻み込まれるのです。」
梅田

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