Melko

幸福の鐘のMelkoのレビュー・感想・評価

幸福の鐘(2002年製作の映画)
3.7
この道は いつか来た道
あゝ そうだよ
アカシヤの 花が咲いている

GWは外出予定びっしりで映画鑑賞お休みだったので、2週間ぶり。

ウォッチリストに入れてて、何となく確認したこの作品があと2時間で終了だったので、駆け込み鑑賞。
うーん、「考えるな感じろ」系映画のようで、色々と考えてしまう内容と見せ方だったように思う。

前々から感じてた、「寺島進イケメン説」が確定したかも。正統派イケメンではないけど、やはり渋カッコいいな、この人。真正面よりも、少し斜め下からのアングルがバッチリきまってカッコいい。
そんな彼が、40歳の時の作品。
顔の作り的には老け顔なのではと思いつつ、この作品では年齢よりも若く見える。

そんな寺島演じる、主人公が歩いてくるところから始まる。閉鎖された町工場の職員か。そこで割腹自殺しようとする同僚を目にして驚きつつ、背を向けて歩き去る。そこから、ヤクザ、殺人犯、リストラされたサラリーマン、死にゆくお爺さんの幽霊、火事にあったシングルマザー等、様々な人間に遭遇する主人公。そのやりとりの果てにあるものは……

この主人公、本編ラスト4分ぐらいまで一言も喋らない。セリフがない。呆れや驚き、焦り等は全て表情のみで演じられる。
そして、そこに絡みつくワケアリな登場人物たちも、大袈裟なリアクションではなく、各々の境遇と心境を、言葉と表情で主人公に伝えてくる。名前を知ってる役者ばかりだったし、なかなか皆さん良い立ち回りをされていた。

芸能人の悲しいニュースから始まった今日だから、リストラサラリーマンのくだりが一番胸にきた。。演じた益岡徹がめちゃくちゃ巧かった。もうそうとしか見えなかったし、セリフの一つ一つが辛かった。
人生の最後にあの選択を取ってしまう人は、みんなあんな心境なのかなぁ。
何故、主人公は何もせず見ていたのか。

いや、やはりそうじゃダメなのだと言わんばかりの最後の疾走だと思った。
長い2日間で、とっても濃密なラッキー /アンラッキーを経験する主人公。
下を向いてばかりでは気づかない、見上げた星の美しさには涙が出るし、朝日に照らされる海を見ていると、気持ちに力が入る。海って不思議。その昔、私も海を見て号泣したことがある。寂しさと情けなさが混じった感情だったと思う。
でも、この主人公は違った。

背中越しに朝日が昇る光景は荘厳。

今まで歩いてきた道を、戻っていく
突然走り出す
自分と関わったことで人の人生が変わる

ラストはたしかにあざとい気もするけど、言いたいことはよくわかる気がするよ。

「人間、1人きりじゃ幸せにはなれない」
人は、1人きりでは生きていけないから

エンドロールの音楽がこれまた渋くて良かった。展開がまったりしてて、1時間28分がめっちゃ長く感じて何度も残り何分か確認したけど笑、忘れられない映画を見た。
そして、明日へのパワーをもらえた気がする。
Melko

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