アニマル泉

マルチプル・マニアックスのアニマル泉のレビュー・感想・評価

マルチプル・マニアックス(1970年製作の映画)
5.0
ウォーターズのように既成概念をはみ出した作品は、既成概念の言葉で語ることが不可能なので何を言っても不謹慎になってしまう。しかし敢えて言うならば、本作は映画を作る喜びに満ち溢れた瑞々しい傑作である。方向性は全く共有されないが、創造の至福感に包まれたフィルムだ。ウォーターズは絶対無比である。似た作品は全く無い。ウォーターズ以外にウォーターズ無し。ここがウォーターズの凄みだ。
デヴァインが圧巻である。全身サイズの歩きっぷり、アップの笑顔、悪夢のような存在感だ。デヴァインは何でも飲み込んでしまう巨大な穴だ。公道で不良に強姦されても、教会でレズビアンのミンク・ストールにロザリオで犯されても(デヴァインはゲイなのでレズビアンになるこの設定は眩暈がするマルチプルだ)、愛人デイビッド・ロシャリーの内臓も、そして巨大ロブスターに犯されても、全て飲み込んでしまうのだ。イエスの磔刑のくだりが再現される。デヴァインとミンクの性交とイエスの受難がエクスタシーで重なり、聖=性=生になる。キリスト教徒には言語道断の解釈になっている。ちなみにウォーターズはカトリックの家庭で育ったゲイで、デヴァインの意味は神聖である。
シャロン・テートの惨劇を想起させる死体の山、ラストの公道でのデヴァインの暴走の白日夢。ウォーターズのパワーはどこまでも過激化して、突き抜ける。白黒16㎜
アニマル泉

アニマル泉