TAKU

緋色の街/スカーレット・ストリートのTAKUのレビュー・感想・評価

5.0
名作。昔ブレッソン好きの知り合いが「『スカーレット・ストリート』はフィルムノワールだけでなく、フリッツ・ラングの最高傑作」と言っていたのも納得の素晴らしさ。ただ、新年早々に観るような映画じゃなかった。なぜなら、この映画には絶望しかないからだ。それも揺るぎない、非の打ち所のない絶望…。

本作はラングが手掛けた前作『飾り窓の女』のリメイクみたいな作品だ。キャストもほぼ一緒で、気弱な銀行員の男が偶然出会った女に惚れたことで地獄の底へと落ちていくというプロットの構造も似ている。そして、ラストで出てくる絵画が、『飾窓の女』で主人公が転落していくきっかけになる絵と同じだ。

だが、本作の方が登場人物たちが欲望に爛れているノワール色が強い。主人公のことを金鶴としか考えていないジョーン・ベネット演じるファムファタールを筆頭に、どいつもこいつも利己的で周りが見えていない。しかし、そういった人物たち以上にイライラさせるのは、自分が愛されていないことに気づいていない主人公の銀行員だったりする。女に対して幻想を膨らませすぎていて、どこまでも愚か。

そんな主人公が、ラストでたどり着くのは、苦しみも無ければ喜びもない世界。罪を償うことも、死ぬこともできない無限地獄。観客は、そんな彼の後ろ姿をただ観ているしかできないのだった。