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ニッポン無責任時代のtjZeroのレビュー・感想・評価

ニッポン無責任時代(1962年製作の映画)
4.1
「どうせやるなら、楽しく」…最近読んだ『書店ガール3』(碧野圭・著)のヒロインの書店員が、仕事上のトラブルに遭遇するたびに己を鼓舞する言葉です。
なんかいいなあ、と思い、自分も声に出してこのフレーズを何度もつぶやきながら、日々の雑務をこなしております。

こんな”呪文”が全く必要なさそうなのが、本作の主人公、平均(たいらひとし)。

香典泥棒で、遅刻常習者で蝶ネクタイで出勤、上司にはゴマをすり、周りにはホラを吹きまくり。
ためらいも、後ろめたさも皆無。徹底的にサラリーマン・ライフを遊び尽しております。

古今東西、これほど陽性で突き抜けたキャラクターも珍しい。
演ずる植木等の強烈な個性あってのモノでしょう。
この役に限っては、ロバート・デ・ニーロやコリン・ファースといった演技巧者が扮したとしても、植木さんには敵わないはず。

唯一無二の個性のカタマリが、これ以上ない役柄に出会った幸福な瞬間を活き活きと捉えたドキュメンタリーみたいな映画。
これがもし、TVドラマだったり、ましてや演劇だったりしたら、これほど長い年月、世界中の人々に届く作品にはならなかったかもしれません。
映画の神様に感謝。
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