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アリス・スウィート・アリスのkekqのレビュー・感想・評価

3.3
70年代の独特の空気感が不気味で心地よいサイコ・サスペンス。”スラッシャー”と銘打たれているが残酷描写は婉曲的で、多面的な心理描写により重きが置かれている作品。

主人公アリスを中心に全員の行動原理が絶妙に読みづらいため展開の予測がしづらく、「こんなタイミングでこんなことすんの!?」という変に勢いづいた大胆な行動の連発に驚かされる。あと降る雨の量がとにかくすごい。ベトナムが舞台かと思った。

ただ二転三転する物語の終盤にかけてアリスの存在感が急速に肥大し、最後まで見きることによって彼女の心の裡が一気に分からなくなる体験がゾワゾワして非常に良かった。

マニア心をくすぐる「幻の名作」のポジションであったらしく、いかがわしいビデオ屋でVHSを借りてデッキに入れて再生した瞬間の昂揚感が想像できる生々しさをはらんだ作品だった。
こうした付加価値なくデジタルのサブスクリプションでスパイダーマンと等価に映画として評価できる現代は本当に面白い。
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