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縞模様のパジャマの少年のkiritoのレビュー・感想・評価

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
4.1
【黒煙】

開始10分。
疑惑は確信に変わる。

この映画の凄いところは子供目線で物語が描かれるから余計な説明は一切しないこと。
だからこそ、映像から何かを読み解こうとし、人が引き込まれるようにできている。

個人的にはあらすじを書いてしまうと、面白さが半減してしまう映画だと思う。


子供は成長し、いつかは大人になっていく。
世界がそんなに綺麗じゃないということを悲しくも学ぶときがくる。
いろんな知識を学んで、考えて。
いつから人は差別感情を持ち、あるいはそれでも仕方ないと許容してしまう人格が形成されてしまうのだろう。

主人公ブルーノは最後の瞬間まで、この時代に起きた事実がわからなかったに違いない。

人形あそびを楽しんでいた12歳の姉が、『先生』の『教育』によって次第に変貌していく。
そんな少しの描写が『教育』が『思想』を根本的にかえることを伝えている。それはある種『洗脳』とも言えるだろう。

母は叫んだが、父も心の底ではこれがいけないということがわかっている。
だからこそ『国のため』と声を荒げ、必死に自分の行為を正当化しようとする。

空の描写が細かい。
青空に浮かぶ黒煙。
そして、嵐の中のあの日。

人種なんて同じパジャマを着てしまえばわからない。
そんな皮肉さでおわることがこの映画を昇華させたと感じた。

2017.12.17
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