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SPACE ADVENTURE コブラのninjiroのレビュー・感想・評価

SPACE ADVENTURE コブラ(1982年製作の映画)
3.0
何を置いても松崎しげる問題。

前置きが必要となるが、以下は個人的嗜好と客観性についての葛藤である。

一般に誤解されがちだが、実はTV版に先駆けてこの劇場版の方が先に製作・公開されているのだが、この誰をターゲットにしてマーケティングしたのか分からない劇場版をわざわざ劇場へ観に行く程のモノ好きも、当時極々少なかったであろうということも原因してか、原作ファンのうち殆どの人は最初に公開直後のTV版を体験し、野沢那智さんのセクシーかつ軽妙なコブラの声の演技にウットリして、それぞれの胸の中で大事に「コブラ」という作品世界観に没頭していた。

挙句、金曜ロードショー辺りの本作の初回放送を、テレビの前に座し、まさに満を持して待っていた全国のちびっ子ファンの多くは、まず悠々と流れる松崎印のテーマ曲にザワザワとした違和感と言い知れぬ不安を感じ、ついに開始早々コブラのその第一声に、椅子に座ってた奴はもんどり打って転げ落ち、寝っ転がって観てた奴は海老反りに返って脚をバタバタさせ、ひとしきり落ち着いた後には皆一様に諦観にも似た苦笑いを浮かべながら悪夢の2時間を過ごす事となったという…。

以上は少し大袈裟ではあるものの、アニメや洋画吹替えに於いてキャラクター=声優の関係は、作品の生命線であるという持論は下ろすつもりはない。
何時までも言っても詮無い事だとしても、こちとらにとってはルパンは山田康雄だし、ハーロックは井上真樹夫、コブラは野沢那智と相場が決まっているのだ(断言)。
もっと言えばクリント・イーストウッドは何時までも山田康雄であって欲しかったし、「俺がハマーだ!」のハマーは羽佐間道夫以外にあり得ないし、「ヒッチコック劇場」の熊倉一雄だって…。

しかし製作の経緯や世の身勝手さを鑑みれば、松崎しげるばかりをA級戦犯として吊るし上げるのは些か気の毒であり、急進派の私としても、本来時系列で考えれば、劇場版を引き継いでTV版に松崎しげるを登板させなかったTV版の製作陣の英断に、尚更の信頼を寄せるばかりである。

本作の紹介が遅れた。

本作は原作の所謂「刺青の女」篇の再構成となっており、原典コブラを知る人には馴染みのストーリーであり、これを抜いてはコブラなしとも言える、作品全体のパイロットとしては申し分のない構成である。
作画のクオリティも当時にしては相当に高く、TV版に先駆けてカマしておきたかった寺沢武一先生の意気込みも伝わってくる。
コブラという物語の肝であるキャラクターの魅力についてだが、宿命の敵・クリスタルボーイは、TV版では人体模型の作りかけみたいな残念な仕様であったものを、それなりに原作における不気味な無機質感を再現して吉。レディやドミニクら女性陣の、所謂寺沢武一的なコスチュームの再現や、その妖艶さも完全にTV版を凌いでいる。そしてコブラは、TV版の野沢那智さんの軽快さが失われて、喋る度にいつもモッチャリと少しモタつくのと、そもそもどうしても松崎しげるの顔が浮かんで来るのが気になっちゃって気になっちゃって…。毎回中盤ぐらいから何とか慣れてくるんだが、(止めときゃいいのに)間を置いて見直す機会がある度に、あーやっぱ違うんだよなぁと…。(以下繰り返し)
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